ミスがあったとき、どう伝える? 〜叱責・注意の文化を考える

こんにちは。
この連載では、介護施設で外国

こんにちは。
この連載では、外国人介護スタッフとの共生に向けた学びをテーマに、
“日本人スタッフが知っておくべき視点”を中心にお届けしています。

今回取り上げるテーマは「注意の伝え方」です。
介護の現場では、ミスや配慮不足、業務上の行き違いは少なからず起こります。
その際、私たちがふだん行っている“注意”や“叱り方”が、
外国人スタッフにはまったく違う意味に受け取られてしまうことがあります。

今回は、その違いをどう理解し、どう対応していけばよいかを考えていきましょう。

日本人の「注意の文化」は“察すること”前提

日本では、注意や指導の場面でも、“察してほしい”という気持ちが根底にあることが少なくありません。

  • 表情や態度で不満を示す
  • 雰囲気を変えて距離をとる
  • 間接的な言い方をする(例:「ちょっと考えてみて」)

こうした「遠回しな注意」は、相手が日本文化に慣れている場合には効果的かもしれません。
しかし、文化的背景が異なるスタッフにとっては、何が問題なのか、どうすればいいのかが伝わらないことがよくあります。

その結果──
「なぜか最近冷たい」
「何が悪かったのかわからない」
「いきなり怒られたように感じる」
といった、コミュニケーションギャップが生まれてしまうのです。

「怒られた=否定された」と感じやすい文化もある

文化によっては、「ミスを指摘されること」自体が、人格や存在を否定されたように感じられることがあります。

特に以下のような文化背景を持つ国では、その傾向が強いと言われています。

  • 公の場での叱責は“恥”であり、強い屈辱と捉えられる
  • 指導は「信頼関係のうえ」でなされるべきとされている
  • 上司や先輩からの直接の叱責は、“辞めろ”のサインと受け取ることもある

たとえば、日本人のつもりでは「ちょっと厳しめに言っただけ」のつもりでも、
外国人スタッフからすると、「自分はもう信頼されていない」「ここには居場所がない」と感じてしまう──
そんなすれ違いが起こりうるのです。

伝えるべきは「期待」か、それとも「怒り」か?

そもそも、注意や叱責の目的は何でしょうか?

  • 「同じミスを繰り返さないようにしてほしい」
  • 「チームに迷惑がかからないようにしたい」
  • 「利用者に安心してもらいたい」

こうした“期待”を伝えることが目的であるはずです。
ところが、感情的に叱ってしまうと、その“期待”よりも“怒り”が強く伝わってしまうのです。

特に日本語が母語でないスタッフに対しては、
言葉のニュアンスや細かな感情の機微は十分に伝わりません。

  • 「どうしてこんなこともできないの?」
  • 「もう何回目?」
  • 「いい加減にしてよ」

これらの言葉は、“ミスの指摘”以上に“存在の否定”として響いてしまうリスクがあります。

「事実」と「気持ち」を分けて伝える

文化や言語が異なる相手に注意を伝える際には、以下の2つを分けて話すことが効果的です。

事実を具体的に伝える
→ 何が、いつ、どのように起きたのかを客観的に伝える

気持ちや期待を言葉にする
→ どうしてそのことが大切なのか、自分はどう感じたのか、何を改善してほしいのか

例えば──

「今日の午後、Aさんの服薬介助が15分遅れてしまったよね。本人が不安そうにされていたのが気になったよ。」
「ミスを責めたいわけではなくて、Aさんに安心してもらうためにも、時間管理を一緒に見直したいと思ってる。」

このように、攻撃ではなく「共に良くしていく」というスタンスで伝えることが大切です。

「叱らないこと=甘やかす」ではない

ここでよくある誤解をひとつ。

「甘やかしてたらミスは減らないよ」
「厳しくしないと、成長しないのでは?」

確かに、一定の厳しさや基準は大切です。
でも、厳しさとは「怒ること」ではなく、「正しく伝えること」「一貫性を保つこと」です。

外国人スタッフへの対応においては、
「感情ではなく行動に焦点を当てる」指導が、むしろ効果的なのです。

  • どうすれば同じミスが防げるか
  • 何に気をつければよかったのか
  • 今後、困ったときは誰に相談するのがよいか

こうした”改善の手立て”を一緒に考える指導こそが、相手にとっても前向きなフィードバックになります。

eラーニングで学べる「注意の伝え方」シミュレーション

eラーニング教材では、「ミスの場面」や「注意が必要な場面」において、
どのように伝えると相手に伝わりやすいかを、シナリオ形式で学ぶことができます。

  • 「ミスをしたスタッフにどう声をかけるか」
  • 「繰り返しのミスがあったとき、どう指摘するか」
  • 「利用者の前で起きた出来事をどう切り取って伝えるか」

これらの教材を通じて、「注意=叱ること」ではない、という新しい視点を得ることができます。

注意は「人を責めること」ではなく、「一緒に良くする」行動

結局のところ、ミスを責めるだけでは、スタッフは育ちません。
特に言葉や文化が違う相手に対しては、「信頼関係を壊さずに伝える」スキルが必要です。

  • 相手の尊厳を守りながら
  • 自分の気持ちや基準を伝えながら
  • 未来に向けた提案として“注意”を伝える

こうしたアプローチを持てるようになることが、
“多文化共生の職場”における本当の意味での「指導力」なのではないでしょうか。

次回のご案内

次回(第6回)は、「“やる気がない”?それとも戸惑っているだけ?──モチベーションの違いを知る」をテーマにお届けします。
外国人スタッフが「やる気がないように見える」背景には、文化や制度の違い、伝え方のズレが潜んでいることがあります。

「なぜ動かないのか」「なぜ続かないのか」その理由を、日本人スタッフの視点から見つめ直していきます。

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