ハラスメント研修の“落とし穴” 〜書き漏らしがちなポイントと、気をつけたい功罪

こんにちは。
全8回の連載では、ハラスメント研修を「現場の力」に変えるためのeラーニング活用法をお伝えしてきました。

この番外編では、その流れを踏まえながら、あえて「書ききれなかったこと」「あまり語られない注意点」に焦点を当ててみたいと思います。

研修は万能ではありません。
うまく設計すれば強力な変革装置になりますが、やり方を間違えると逆効果にもなり得る。
だからこそ、あえて見落としやすい“功罪”に目を向ける視点を持っておくことが大切です。

❶「学んだ人が損をする構造」をつくらない

ありがちな落とし穴のひとつが、「真面目に研修を受けた人ほど、気づきが増えて苦しくなる」パターンです。

  • 研修で「これはハラスメントだ」と気づいた
  • けれど、職場では“当たり前”として流されていた
  • 指摘したら浮いてしまった
  • 誰も反応せず、自分だけがもやもやして終わった

このように、「学んだこと」と「職場の現実」が乖離していると、
気づいた人が孤立する構図が生まれます。

これは、研修のせいではなく、研修後のフォローや対話が設計されていないことに原因があります。
研修の導入前には、必ず「管理職側の理解」と「相談ルートの明示」をセットにしましょう。

❷ 管理者に“過剰な正しさ”を押しつけない

ハラスメント対策では、つい「管理職の責任」を強調しがちです。
ですが、それが行きすぎると、次のような“委縮”が起きます。

  • 「何を言ってもパワハラになるんじゃないか」
  • 「注意しただけで訴えられるんじゃないか」
  • 「だったら何も言わない方がマシだ」

これは明らかに逆効果です。
大切なのは、「管理職も安心して関われる対応の型」を示すこと。

eラーニングの中でも、指導とハラスメントの違いを具体的に整理し、
「伝えるべきことは伝えていい」という前提を明確にする必要があります。

❸ “制度がある”ことと“安心できる”ことは違う

相談窓口を設置しても、「誰も利用しない」ことは少なくありません。

それは制度が悪いのではなく、使ったときの空気が整っていないからです。

  • 通報=裏切りと見なされる
  • 相談しても「で、どうすればいいの?」と返される
  • 匿名のはずなのに、誰の話かすぐにバレる

こうした不信感は、制度よりも“文化の問題”です。

だからこそ、eラーニングでは「制度の使い方」だけでなく、
「制度を使える職場風土とは何か」を考える設計が不可欠です。

❹ “やった感”がかえってリスクになる

とくに管理層が気をつけるべき功罪が、「一度実施しただけで安心してしまう」ことです。

  • 研修実施記録もある
  • 全員受講済みのチェックリストもある
  • でも、実際には職場の空気は何も変わっていない

こうなると、「研修をしたのに、問題が起きた」という構図になり、
対応しなかった責任が重く問われることになります。

eラーニングで大切なのは、履歴として残すこと、継続していくこと。
1回限りではなく、「文化として定着するまで続ける」ことが信頼の源です。

❺ 多様性に“触れるだけ”で終わらせない

昨今では、SOGI(性的指向・性自認)や外国人スタッフとの協働など、
ハラスメントの構造がより複雑になっています。

ここで注意すべきは、「多様性に関心を持とう」で終わってしまうこと。
知識として知っただけでは、現場での配慮や判断に結びつきません。

  • 「それを言ったらどう感じるか」
  • 「その呼び方は相手にとってどうか」
  • 「“気づけなかった”では済まない領域がある」

→ だからこそ、行動の選択肢まで落とし込んだ研修設計が求められます。

結論:“小さなズレ”を放置しないこと

ハラスメント研修の功罪とは、多くが「小さなズレ」から生まれます。

  • 内容はよかったが、現場で実践できない
  • 対策は立てたが、空気がついてこない
  • 教材は立派だが、フォロー体制が弱い

これらを「仕方ない」で流さず、一つひとつのズレに橋をかけていくことが、真の研修デザインです。

そして、その橋渡しこそが、eラーニングが最も得意とする部分です。

お問合せ・ご相談はこちらから

「うちも“やったことにする”で終わっていないか心配…」
「仕組みと風土の両方を整えたい」

そんな方は、以下のリンクからご相談ください。

👉 お問合せ、研修運用の留意点についてはこちら

この番外編が、みなさんの研修づくりの“ひとつ先”を見据える手がかりになれば幸いです。