“ケースで学ぶ”から“行動につなげる”へ 〜記憶に残る教材設計とは?
こんにちは。 この連載では、医療・福祉の現場で行われるハラスメント研修を「やらされ感」から「行動変容」へ変えていくための方策として、eラーニングを中心にご紹介しています。
第6回となる今回は、記憶に残る教材とはどのようなものか? そしてそれをどうやって「行動につなげる」設計にするかという視点から、教材構成の考え方をご紹介します。
一方的な“説明型研修”では動けない
従来の研修でよく見られるスタイルは、以下のようなものです。
- 法律の定義や制度の背景についてスライドで解説
- 過去の判例や厚労省の通達を読み上げる
- 参加者は基本的に「聞くのみ」
こうした“講義型”の研修は、知識としての理解には一定の効果がある一方で、
「じゃあ実際にどう行動すればいいの?」という応用力にはつながりにくいという課題があります。
研修の目的は“理解”ではなく“行動変容”
研修は単なる知識提供ではありません。 目指すべきは、職場での具体的な言動や判断が変わること、すなわち「行動変容」です。
- ハラスメントを目撃したとき、止める言葉が出るか
- 部下から相談を受けたとき、正しい初動が取れるか
- クレーム対応中、必要なラインを引いて行動できるか
→ これらは「知っている」だけではできません。
想定しておくこと、練習しておくこと、判断を“自分ごと”にしておくことが必要なのです。
記憶に残り、行動につながる教材の3要素
では、行動につながる教材とはどのようなものでしょうか。 私たちは次の3つの要素を重視しています。
① ケースベースであること
→ 実際にありそうなシーンを切り取り、具体的な状況の中で考える。
② 判断と行動を選ばせること
→ 「あなたならどうしますか?」という問いを通じて、選択肢から考えさせる。
③ 感情と記憶に残すこと
→ 「ドキッとした」「自分もやってしまっていたかも」といった感情を引き出す。
このように、「考える→選ぶ→納得する」というサイクルがある教材こそが、学びを“記憶に残る経験”に変えていきます。
eラーニングだからできる“体験型教材”の工夫
私たちのeラーニング教材では、以下のような機能を取り入れています。
- ナレーションによるリアルな登場人物のやりとり
- 会話形式で進む「もしもあなたがその場にいたら」型のストーリー
- 判断を選ぶ設問で、自分の対応傾向に気づく
- 正解・不正解だけでなく、なぜその判断が必要かという解説
- 「明日から使える言葉」を示すコメント集や対話例
こうした工夫により、一人ひとりの受講者が「自分もこの場にいたらどうするだろう」と考える入口がつくられます。
「自分で考えたこと」しか行動にはつながらない
教育心理学の世界では、「人は、自分で考えて選んだことしか行動に移せない」と言われます。
逆に言えば、上から押し付けられた研修では、「やったふり」「知ってるだけ」で終わってしまうのです。
だからこそ、eラーニング教材では以下を大切にしています。
- 「自分で考える余白」
- 「選択肢を与える」
- 「フィードバックを丁寧に返す」
→ この3点によって、学びが“インプット”で終わらず、“アウトプットにつながる準備”になるのです。
「リアルさ」こそが、記憶と行動の鍵になる
印象に残る教材には、次のような特徴があります。
- 「あのセリフ、実際にも言われたことがある」
- 「あのシーン、うちの施設でも起きそう」
- 「あの選択肢、つい選びたくなるけど、危なかった」
これは、教材の中に“現場の空気感”があるからこそ生まれる反応です。 だからこそ、私たちの教材では、実在の声や現場経験者の監修をもとに、 “ありふれていてリアルなトラブル”を多数盛り込んでいます。
職場で「使える」学びとは?
研修の理想的な効果とは、次のような瞬間に現れます。
- 「昨日の教材で出てきたフレーズ、今日使ってみました」
- 「あの判断問題で選んだ対応、実際の場面で迷わずできた」
- 「これ、研修でやったのと似てるな、と思って動けた」
つまり、教材の中にあった言葉・判断・選択肢が、“行動の引き出し”になっている状態です。 この「引き出し」を増やしていくことこそが、ハラスメント対策の本質です。
次回予告
次回(第7回)は、いよいよ「現場で継続する仕組み」としてのeラーニング運用について取り上げます。 どんなに良い教材でも、「続かなければ意味がない」。 忙しい職場でも運用できる工夫、ログ管理、モジュール分割、管理者負担の軽減など、 “やりきれる仕組み”をご紹介していきます。
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