“実施したことにする” ~形骸化するハラスメント教育の現実
こんにちは。 前回は、ハラスメント対応が現場職員の“個人任せ”になってしまっている問題に触れ、 その限界とeラーニングによる「共通行動の土台づくり」の可能性について考えました。
第4回となる今回は、さらにその一歩先―― 「とりあえずやったことにする」研修が、なぜ問題なのか そしてそれをどう超えていけるのか、をテーマにお話しします。
「やったことにする」研修とは?
ハラスメント研修の実施報告書には、こう書かれているかもしれません。
- 実施日:〇月〇日
- 参加者:全職員(欠席者は資料配布により受講扱い)
- 内容:「ハラスメント防止に関する基本理解」講義
この記録が悪いわけではありません。 しかし、それがすべてであれば、“中身のない”教育が「実施済み」とされてしまうリスクがあります。
「とりあえず1時間聞けばOK」 「その場にいればチェックシートに名前が載る」 「その後の行動は問われない」
こうして、“形だけ”の研修が職場に残ってしまうのです。
なぜ形骸化するのか? 5つの構造的要因
形骸化した研修が続く背景には、いくつかの“仕方ない事情”があります。
| 要因 | 説明 |
| ① 時間がない | 業務優先で、研修は短時間・一方的になりがち |
| ② 内容が抽象的 | 法令や制度の話だけで“自分ごと”に感じにくい |
| ③ 行動が求められない | 知識確認だけで、実践や反応が問われない |
| ④ フィードバックがない | 受講しても「これで良かったのか」が分からない |
| ⑤ その場で完結する | 継続学習の仕組みがなく、1回で終わる |
→ こうした要素が積み重なると、「学んでも変わらない」「聞くだけで終わる」という空気が職場に定着してしまいます。
“研修があるから大丈夫”が、実は危険な理由
研修の目的は、「やった」という安心感を与えることではなく、 「行動を変えること」「問題を未然に防ぐこと」です。
しかし、形骸化した研修には以下のようなリスクがあります。
- 受講者の記憶に残っていない
- 実際に起きたとき、対応が取れない
- 「研修してるはずなのに…」という失望感が生まれる
- 対応ができなかったことで、「研修の意味がない」と言われる
つまり、形式だけ整えた研修ほど、実は“裏切りの研修”になってしまう可能性があるのです。
eラーニングで“形骸化”を防ぐ仕組みとは?
こうした“とりあえず研修”を抜け出すためには、「仕組みで学びを支える」ことが必要です。 eラーニングによるハラスメント研修では、次のような機能で“行動と理解”を連動させています。
- ✔️ 単元ごとに確認テストを設け、理解度を可視化
- ✔️ ケースに対する判断問題で“対応力”をチェック
- ✔️ チェックリスト形式で“自分の振る舞い”をふりかえり
- ✔️ 動画・音声・テキストの複合設計で“記憶に残す”工夫
- ✔️ 内容修了後に「確認証」が出力され、記録も残る
こうした設計により、“参加して終わり”から“理解して行動に移す”学びへと、自然に移行できるのです。
実際に「研修の質が変わった」と言われる変化とは?
ある医療法人でeラーニングを導入した際、職員の声にこういった変化がありました。
- 「動画だけかと思ったら、想像以上にリアルなケースが多くて驚いた」
- 「一人で学ぶから、余計な気を使わずに集中できた」
- 「最後の振り返りテストで“自分ならこうする”が問われて納得感があった」
- 「学んだ内容を、職場のミーティングで共有したくなった」
これらの声が示しているのは、eラーニングが“自分の言葉で考えるきっかけ”を与える設計になっているということです。
“誰かのため”から、“自分のため”の研修へ
集合型研修では、「上司が来いと言ったから」「一応参加しておこう」といった受け身の姿勢が生まれがちです。 しかし、eラーニングでは時間と場所を自分で選べるため、「学ぶ理由」も自分の中に持ちやすくなります。
- 「こういう場面、前にもあった気がする」
- 「自分ならどう対応しただろう」
- 「後輩にも伝えたい内容だった」
このように、研修が「他人事」から「自分事」に変わる瞬間が、最も学びが定着するポイントです。 eラーニングは、それを個々のペースで実現する環境を整えます。
まとめ:実施した“つもり”を卒業しよう
本当に意味のあるハラスメント研修とは、次のような状態を指します。
- 職員一人ひとりが「どこまで学んだか」が明確
- 対応すべき場面で、迷わず行動できる
- 「やって良かった」と感じられる手応えがある
- 次につながる仕組みや記録がある
それは、単に「実施した」という記録を残すだけでは到達できません。 理解・行動・継続――この3つを支える仕組みこそが、研修を「機能させる鍵」なのです。
次回予告
次回(第5回)は、研修教材を「基礎編」「医療機関編」「介護施設編」の3つに分けている理由とその意義についてご紹介します。
なぜ“一律研修”ではダメなのか? どのようにして“現場ごとの違い”に対応するのか?
分野別に最適化された教材づくりの工夫をお届けします。
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