【番外編】:eラーニングで本当に大丈夫? ~実技や対面研修とどう両立させるか

「法定研修って、座学だけじゃないですよね?」
「介護技術や感染対策の実技もあるのに、eラーニングだけでいいの?」

eラーニングによる法定研修の整備が進む中で、こうした不安の声も聞こえてきます。
特に現場経験が豊富な職員や、技術重視の指導者ほど、「画面の中で学ぶだけで身につくのか?」という疑問を持ちやすいのも自然なことです。

本稿では、eラーニングの可能性と限界、そして実技研修との両立とマネジメントのあり方について、具体的にお伝えします。

■ そもそも、法定研修には「実技」もある

厚生労働省が示す法定研修の中には、明確に“実習的理解”や“体験的理解”が求められるテーマがあります。たとえば…

  • 身体拘束の廃止に関する対応の理解と解除方法
  • 感染症対策における個人防護具(PPE)の装着・脱衣方法
  • 移乗介助やベッド上ポジショニングなどの身体的介助技術
  • 高齢者虐待の予防における対応場面のロールプレイ
  • 災害時の避難誘導やBCP訓練の実践

これらは、確かに「画面を見るだけ」「話を聞くだけ」では完結しません。
では、eラーニングではこれらの実技をどう扱うべきなのでしょうか?

■ eラーニングは「実技研修の代替」ではなく「前提」になる

ここで大切な視点があります。
それは、eラーニングは実技研修の代わりではなく、実技研修を成立させる土台であるという考え方です。

たとえば、「移乗介助の正しい体の使い方」を実習で教えるにしても、事前に以下の知識が頭に入っているかどうかで理解度は大きく変わります。

  • ボディメカニクスの基本原理
  • 誤介助による利用者・職員のリスク
  • 動作の観察ポイント
  • 法制度上求められる安全配慮義務

これらを予備知識としてeラーニングで学習しておけば、実技研修の時間は「理解を深める・体で覚える」に集中できます。

つまり、“知ってから、やる”という研修設計こそが、学習効果を最大化する鍵なのです。

■ 「実技もeラーニングで学べるの?」という疑問に応える

「でも、eラーニングって結局“見るだけ”でしょ?」という疑問もあるかもしれません。
しかし、実際には実技要素のあるテーマも、視覚・聴覚・反復性を活かした動画学習で十分な理解支援が可能です。

● Skill Ready V(実技解説動画)による事前学習の利点

  • 実際の動作手順を視覚的に確認できる
  • 解説ナレーションと字幕でポイントを繰り返し学べる
  • 何度も再生でき、理解が浅い部分を復習できる
  • 外国人職員向けに多言語字幕やスローモーション対応も可能

動画での事前学習は、「研修を初めて受ける人」「忘れてしまった人」「繰り返し確認したい人」にとって、とても心強いツールです。

実技・対面研修も「eラーニングシステムで管理」できる

「でも、実技は結局対面でやらないと…」という声も当然あります。
その通りです。
しかし重要なのは、実技研修の“実施と記録”も、eラーニングの管理システムで一元化できるということです。

▼ たとえば以下のような管理が可能です:

項目eラーニング管理システムでできること
実技研修の出席管理QRコード出席確認/講師による出席入力
実施内容の見える化写真・動画・記録シートの添付によるエビデンス管理
評価・確認テストの記録実技評価シートやテスト結果のスキャン・入力
対面研修+動画の組み合わせ活用同一テーマを動画と実技で組み合わせ、受講要件として設定可能
実施者・講師の記録実施日・実施責任者の記録をシステムに紐づけて管理

このように、「eラーニング=オンライン完結」ではなく、「eラーニング=学習の中核プラットフォーム」として運用することで、あらゆる研修形式を一元管理することが可能になります。

■ 不安に応えるポイント:受講者に伝えるべきこと

eラーニングに不安を抱く受講者には、以下の3点を伝えることで安心感が高まります。

「実技や対面研修が必要なものは、きちんと現場でやります」

→ eラーニングは“すべてを置き換えるもの”ではない、という説明が信頼につながります。

「事前に知識を学んでから実技に臨めるので、むしろ学びやすくなります」

→ 「予習しておける」ことが不安軽減につながり、実技時の緊張も和らぎます。

「対面研修の受講履歴も、同じシステム上で確認できます」

→ 自分が「どこまで完了しているか」を見える化することで、安心して取り組めるようになります。

■ 実技を含めた「総合的な学習体制」へ

eラーニングか、実技か。
二者択一ではなく、両方を補完し合うハイブリッド型研修が最も効果的です。

  • 基礎知識:動画でインプット
  • 実践体験:実技研修でアウトプット
  • フォローアップ:再視聴や確認テストで定着支援
  • 一元管理:すべての履修履歴を見える化

このような総合的な設計によって、初めて「全員が、安心して、受けきれる」研修体制が実現します。

■ 「eラーニングだから不安」ではなく、「eラーニングがあるから安心」へ

私たちは、eラーニングが研修の質を下げるものではなく、研修全体を底上げする仕組みであると考えています。

「わかりやすく」「受けやすく」「記録しやすく」「管理しやすい」
──この4つを備えた研修体制こそが、いまの介護現場に求められているのではないでしょうか。

番外編までお読みいただき、ありがとうございました。
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