“日本人だから当たり前”を問い直す 〜職場文化の共有とリーダーの役割
こんにちは。 この連載では、介護施設で外国人スタッフと協働するうえで、日本人スタッフが「何を学ぶべきか」にフォーカスし、共生と信頼の土台づくりについて考えてきました。
最終回となる第8回のテーマは、“文化の違い”という見えにくい壁をどう乗り越え、職場としての一体感をどう育てるか。 そして、その土台を支える「日本人側の意識」と「リーダーの姿勢」についてです。
「わかってくれているはず」という油断
私たちは、日本人同士なら言葉を交わさなくても伝わることが多くあります。 職場の雰囲気、空気、タイミング──いわゆる「阿吽の呼吸」が働くからです。
しかし、それは“同じ文化に長く身を置いてきた者同士”だからこそ可能な感覚です。
たとえば、「もうそろそろ終わりにしようか」という一言に込められた、
- 手際よく片づけを始めてほしい
- 終業時間を意識して動いてほしい
- さりげなく周囲にも声かけしてほしい
──こうした“行間の意味”は、明示されないまま共有されているのです。
このような「暗黙の了解」は、外国人スタッフには伝わりません。 にもかかわらず、「わかってくれているはず」と思い込んでしまう── これが、すれ違いや不満の温床になるのです。
“文化”は、制度よりも根深い
職場の文化とは、単なる規則やマニュアルではありません。 日常のふるまい、言葉づかい、判断の基準、役割の感覚── つまり、“目に見えないルール”こそが文化の正体です。
たとえば…
- 失敗したらすぐ報告する文化
- 多少無理してでも頑張るのが美徳とされる文化
- 会議では上司の顔色をうかがう文化
- 「自分で考えて動け」が求められる文化
こうした文化が、日本人スタッフの中では“当たり前”として根づいています。
しかし、異文化で育った外国人スタッフには、
- 「なぜ叱られたのか分からない」
- 「どこまでが自分の責任なのか分からない」
- 「聞きたいけど、質問できる雰囲気じゃない」
──といった“理解不能な空気”として映っているのです。
「伝わらない」のではなく「共有していない」
職場の文化は、“暗黙の了解”ではなく“明文化”してこそ共有できます。
- どんな場面で、どう動いてほしいか
- どんな言葉が歓迎され、避けるべきか
- どんな振る舞いが「信頼」や「協調」とされるのか
こうしたことを、外国人スタッフに「察してほしい」ではなく、日本人側が丁寧に伝える努力が必要です。
「なぜそれが必要なのか」 「どんな背景があるのか」 「現場でどんな影響が出るのか」
──こうした“理由づけ”とともに説明することが、共感と納得を生みます。
リーダーの役割は「文化の翻訳者」
介護現場では、日本人スタッフがリーダーや教育担当になる場面が多くあります。 その際、重要な役割はただ一つ──
「自分たちの文化を、わかりやすい言葉と行動で翻訳すること」です。
- 言葉だけでなく、具体例を交える
- できていることを認め、褒める
- 失敗しても、背景を聞く
- 行動ではなく意図を確認する
これらを徹底していくことで、文化の違いによる誤解や摩擦を防ぎ、信頼を育てていくことができます。
「変わる」のは、受け入れる側から
そして、何より大切なのはこの視点です。
「文化が違うから難しい」のではなく、 「文化が違うから、受け入れる側が変わらなければならない」ということ。
- 異なる文化を否定しない
- 理解できないからといって排除しない
- 自分たちが基準だという前提を捨てる
これらを実行できる組織は、外国人スタッフにとって「安心して働ける場」になります。
そしてそれは、日本人スタッフにとっても、風通しがよく・助け合いがあり・支え合える職場につながるのです。
「文化の違い」を乗り越える仕組みを
この連載を通して繰り返し伝えてきたこと。 それは、外国人スタッフとの共生は、単なる“受け入れ制度”ではなく、職場全体の“学びの再設計”であるということです。
そのために必要なのが、以下のような仕組みです。
- 多文化理解をベースにしたeラーニング
- OJTを支える視覚的・段階的な教育設計
- 日本人スタッフ自身が学び直す機会
- リーダー層の役割意識とサポート
“文化を越えて働く”ためには、教育が不可欠なのです。
おわりに
8回にわたってお届けしてきたこの連載。 もし、あなたの職場で「どうすればうまく共生できるのか」と悩んでいる方がいたら、 この視点を思い出していただければ嬉しいです。
「違いをなくす」のではなく、 「違いを認めて、共に働く」こと。 それは、きっと介護の現場にあたたかさと信頼をもたらしてくれるはずです。
教育設計、教材、動画、管理ツールなどの情報は以下をご覧ください。
👉 外国人スタッフ向け eラーニングと教育体制構築はこちら
