指示待ち?自己判断? 〜働き方の“距離感”が違うとき
こんにちは。 この連載では、介護施設で外国人スタッフと協働する日本人スタッフに向けて、 文化の違いをどう理解し、どう接し、どのように支え合えばよいかを、 現場で使えるeラーニング教材の視点も交えてお伝えしています。
今回は、介護現場で特によく耳にする声をテーマに取り上げます。
- 「言えばやるけど、言わないと動かない」
- 「言ってないことを勝手にやってしまう」
- 「指示した通りにしか動けない」
- 「判断を任せると違うことをされる」
──これは、日本人スタッフから外国人スタッフへの“モヤモヤ”の代表格ともいえる感覚です。 背景には何があるのでしょうか。
日本人が無意識に期待している“阿吽の呼吸”
介護の現場では、業務マニュアルが整っていても、実際にはマニュアル外の判断が求められる場面が多くあります。
たとえば、こんなときです。
- 利用者が急に不安を訴えたとき、どう動くか
- 予定していたケアが変更になったとき、どう連携するか
- 自分がやるべきか、他の職員に伝えるべきか、見極めるとき
日本人スタッフ同士なら、経験や空気を読む力、関係性の積み重ねによって「言わなくても察する」動きが期待されます。 これがいわゆる“阿吽の呼吸”というやつですね。
でも──この感覚こそが、外国人スタッフにとって最大のハードルになります。
指示は「明確」に、「理由」も添えて
外国人スタッフにとって、職場での動き方は「明確な指示があるかどうか」が大前提になります。
その理由は、次のような文化的・教育的背景によるものです。
- 指示がないのに勝手に動くと「責任を問われる」ことがある
- 先輩の判断を越えるのは「失礼」とされる文化もある
- 日本語の指示が抽象的だと、意味が正確に理解できないことがある
- 「推測」よりも「確認」が重視されるトレーニングを受けてきた
つまり、「空気を読む」文化ではなく、「確認してから動く」文化に慣れているのです。
「指示されることが当たり前」な環境とのギャップ
たとえば、日本人スタッフが「気づいたら動いてくれるよね」と期待しているとします。
しかし、外国人スタッフは「まだ何も言われてない=まだやるタイミングではない」と理解している。
その結果──「なんで何もしてないの?」「いや、まだ指示がないから」
という、お互いに悪気のないすれ違いが生まれます。
また逆に、「もう動いてくれていいのに…」と思っていたら、 外国人スタッフは「前に勝手にやって注意されたので、今回は確認してからにします」と考えているかもしれません。
こうした背景を知らずにいると、「指示待ち人間だ」と誤解されたり、 逆に「勝手に判断する人」と見なされたりしてしまうのです。
判断を委ねるなら、「基準」も一緒に伝える
では、どうすればよいのでしょうか。
カギになるのは、「任せること」と「放任すること」は違うという認識です。
「自分で判断して動いていいよ」と伝える場合には、あわせて以下のような情報も共有しましょう。
- どういうときに自分で判断してよいか(例:利用者が軽度の変化を示したとき)
- 判断の結果をどう報告するか(例:判断後にスタッフリーダーへ口頭で)
- 迷ったときはどうすればよいか(例:LINEグループで共有)
つまり、“判断して動いてOK”というメッセージには、 判断の“基準”と“結果の報告方法”をセットで伝えることが必要なのです。
「仕事ができる」より「相談できる」が大事
介護施設におけるチームワークで最も重要なのは、判断の正確さよりも「相談のしやすさ」です。
外国人スタッフが「自分ひとりで抱え込まず、困ったら聞ける」雰囲気を持てるかどうか。
それが、働き方の距離感を縮める第一歩です。
- 「分からなかったら何度でも聞いてね」と伝える
- 「聞いてくれてありがとう」「確認してくれて助かる」と声をかける
- 自分の指示が伝わりにくかったと感じたら、「伝え方」を見直してみる
こうした姿勢が、「言いやすい・聞きやすい」職場文化を育てます。
eラーニングで学ぶ「判断の場面」と「対応の選択肢」
eラーニングでは、こうした判断が必要な場面をシミュレーション形式で学ぶことができます。
- 「利用者が急に転倒したら、どう動くか?」
- 「他の職員が忙しそうなとき、自分の判断で介助に入るべき?」
- 「指示と違う状況になったとき、どこまで自己判断してよい?」
それぞれの場面で、「適切な判断の仕方」や「報告・相談の重要性」について具体的に学べるようになっています。
さらに、動画やナレーションを通じて「判断の背景」や「考慮すべきこと」まで含めて理解できる設計です。
違いを前提に、“任せ方”を再設計しよう
私たちが外国人スタッフに対して求めている「自律的な動き」は、 “日本的な感覚の延長線上”にある価値観かもしれません。
だからこそ、まずは以下のように考えてみてください。
- 指示が必要な場面と、任せてよい場面を明確に分けよう
- 自律的判断を求めるなら、判断の基準と手順も伝えよう
- 判断の精度よりも、「相談できる関係」を優先しよう
こうしたアプローチを取ることで、
「動ける外国人スタッフ」ではなく、
「支え合えるチームの一員」として関係を築いていけるようになります。
次回のご案内
次回(第5回)は、「ミスがあったとき、どう伝える?──叱責・注意の文化を考える」をテーマに、 異なる文化的背景を持つスタッフに対する“注意の仕方”や“叱り方”の違いと、 それが与える影響について掘り下げます。
“日本式”の注意が、なぜ傷つけてしまうのか──その構造と対応策に迫ります。
