教える余裕がない ~現場に任されすぎた“自己流対応”の限界
こんにちは。 この連載では、医療・福祉の現場におけるハラスメント対策研修を、いかに“負担”から“支え”に転換できるかをテーマに、eラーニングの活用による仕組みづくりをご紹介しています。
今回はその第3回として、「ハラスメント対応が“個人の経験と裁量”に任されすぎている現状」について考えていきます。
「現場に任せている」ことのリスク
ハラスメントが発生した際、対応を求められるのは多くの場合“その場にいた職員”です。 それが介護職員であれ、看護師であれ、相談員であれ、「まずどうするか」の判断は現場に委ねられています。
一見、柔軟で自律的な体制に思えるかもしれません。 しかし、実態としてこうした声を多く耳にします。
- 「止めなきゃと思ったけど、自信がなかった」
- 「これはハラスメントに入るのか分からず、誰にも言えなかった」
- 「前のリーダーはこうしてたけど、今のやり方で合ってるのか…」
- 「結局、誰かが動かないと、何も起こらない」
つまり、“現場の判断力に期待しすぎている”ことが、対応の不一致や放置につながっているのです。
対応力の“ばらつき”が引き起こす職場の不安
研修で「○○なときは△△しましょう」と学んだとしても、 実際の場面では緊張や忙しさ、感情の揺れなどによって、想定どおりにはいかないものです。
そこに対応力のばらつきが加わると、次のような問題が起きてきます。
| 状況 | 問題点 |
| ベテランは止められるが新人は止められない | 組織対応ではなく“個人技”に依存してしまう |
| 担当者によって報告の基準が違う | 情報共有がされず、判断が属人化する |
| 対応に迷って動かなかった | その沈黙が“黙認”と見なされ、信頼が損なわれる |
→ こうした不一致は、“現場での不安感”を高め、結果的に「動かない空気」を育ててしまうのです。
“みんなが共通して動ける”状態をどうつくるか?
ハラスメント研修の本質は、知識を得ることではなく、「何かあったときに、誰もが迷わず動けるようにする」ことにあります。
そのために必要なのは、以下の3つの共有です。
① 共通認識 → 何がハラスメントか、どこからが対応対象かの判断基準を統一。
② 共通行動 → 初動対応として「止める・記録する・報告する」など、誰でもできるアクションを定める。
③ 共通の言葉 → 「それ、ちょっと気になります」「一度落ち着きましょう」といった“止める言葉”の定着。
この「共通の判断・行動・言葉」があってこそ、属人的ではない“組織としての対応力”が育ちます。
とはいえ、現場には“教える時間”がない
このような対応力の共有は、本来であれば職場内でのOJTやケーススタディを通じて行うのが理想です。 しかし現実には、以下のような状況が立ちはだかります。
- 「新人教育は時間がなくて最低限だけ」
- 「ハラスメント対応は“習うより慣れろ”になりがち」
- 「全員が参加できるケース会議の機会が取れない」
つまり、対応力を育てるための“余白”が現場にないのです。
この「教えたいけど教えられない」というジレンマをどう解決するか──そこにこそ、eラーニングが活躍する理由があります。
eラーニングで実現する“行動につながる研修”とは
私たちが提供するハラスメント研修eラーニングでは、「対応力を育てる」ことを重視し、次のような仕組みを組み込んでいます。
- ✔️ 対応の基本「止める・記録する・つなぐ」を繰り返し紹介
- ✔️ 実際にありそうな事例をもとに“判断と行動”をシミュレーション
- ✔️ ケースごとの選択問題で、自分の対応傾向に気づける設計
- ✔️ 「こう言って止めてみましょう」といった“言い回しの定着”にも焦点
- ✔️ 管理職向けには初動対応・聞き取り・記録の方法も具体的に学べる内容
このように、個人の経験値ではなく、教材によって“行動モデル”を共有することが可能になります。
“できる人がやる”から、“誰でも動ける”組織へ
ハラスメント対応が属人化している組織では、「あの人がいないと止められない」「〇〇主任がいないと相談できない」といった依存状態が生まれがちです。
しかし、本当に強い職場とは、
- 誰がいても、最初の一言が出せる
- 誰もが相談できる相手を知っている
- どの職員も、迷わず対応できる
――そんな“全体としての対応力”を備えた組織です。
eラーニングによる共通研修は、そうした「個からチームへの移行」を支える最も効果的な手段のひとつです。
次回予告
次回(第4回)は、さらに深く踏み込み、「“やったことにする”ハラスメント教育の現実」についてお話しします。 形式的な集合研修が抱える限界と、eラーニングだからこそできる“学びの質と行動の連動”について掘り下げていきます。
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「属人的対応から、組織的対応へ」切り替えていきたい方へ。
対応の基礎を共通化するeラーニング教材の詳細や導入方法について、
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