「管理者が抱え込む負担と不安──相談されても動けない現実」
こんにちは。前回は、カスハラ対応を“属人的対応”のままにしておくことの危うさについて掘り下げてお話ししました。今回はその続きとして、「現場管理者が直面する“判断の孤独”」について考えていきましょう。
現場からの「相談」はゴールではない
ある日、職員があなたのもとにやってきます。
「すみません、ちょっと困ったことがあって……」 「◯◯さんの家族に、昨日かなり強い口調で怒鳴られまして……」 「勤務中ずっとモヤモヤしてしまって、気持ちが切り替えられなくて……」
これは“現場から声が上がった”瞬間であり、非常に重要なことです。 ですが、このあと、管理者には「判断」と「対応」が求められます。
「聞いたけど、どうしていいかわからない」
ここで多くの管理者が直面するのが、「どう対応するべきか」が不明確であるという現実です。
- 「それってカスハラに該当するのか……?」
- 「この程度で上に報告していいのだろうか……」
- 「相手は家族だし、逆に反感を買ったら……」
- 「前も似たようなケースがあったけど、何もできなかった……」
頭の中を、こうした“迷い”がぐるぐると駆け巡ります。 結局、「とりあえず様子を見よう」と判断を保留してしまうケースも少なくありません。
「言ったのに、何もしてくれなかった」という声
ここで起きているのは、職員と管理者の“認識のズレ”です。
- 職員:「相談したのに、放置された」
- 管理者:「受け止めたが、動く判断ができなかった」
結果として、「管理者に相談してもムダ」「話しても変わらない」という諦めが職員側に生まれてしまいます。
この“失望の蓄積”こそが、声を上げにくい職場風土をつくる最大の原因です。
管理者も“孤立”している
忘れてはならないのは、管理者自身もまた、相談できずに抱え込んでいるということです。
- 本部に相談しても動いてくれない
- 方針が明確でなく、判断の根拠が持てない
- 対応に失敗したくないというプレッシャー
- 対応しても結局、現場の評価が下がるのではという不安
つまり、職員と同じように、管理者もまた“組織の支え”を必要としているのです。
「カスハラ対応=管理者の責務」だけでは回らない
施設によっては、「カスハラがあったら管理者が対応する」というルールが形式的に存在していることもあります。
しかし、実態としては:
- そもそも“何をもって対応”とするのか不明確
- 対応しても、職員への説明・家族への配慮・記録の整理など多方面に時間がかかる
- 他の業務との兼ね合いで後回しになってしまう
こうした状況では、いくら制度があっても“機能”しません。 管理者の行動を支える「判断材料」と「仕組み」が必要なのです。
対応判断を支える“知識とツール”を
管理者が抱え込まずに、的確に判断し動くためには、次のような支援が必要です。
- カスハラの定義や類型を明文化すること → 「これは該当する」「この場合はこう進める」と判断しやすくなります。
- 段階的対応フローの整備 → 注意 → 面談 → 文書通知 → サービス制限 など、対応のステップが明確になります。
- 記録テンプレートや報告フォーマットの整備 → 対応履歴の管理が簡素化され、管理者の負担を軽減します。
- 全職員への共通研修の実施 → 管理者だけでなく、職員も「判断の軸」を持つようになります。
教育が“共通言語”をつくる
ここであらためて重要になるのが、教育の仕組みです。
eラーニングによる定期的な研修を導入することで、 カスハラに関する共通理解・対応フロー・判断基準を施設全体で共有することができます。
- 職員:「あの動画で見たケースだ」
- 管理者:「このパターンは、ステップ②の対応が適切だな」
- 本部:「記録もそろっている。契約見直しの判断に進もう」
こうした“共通言語”があれば、誰かがひとりで悩む構造はなくなります。
管理者に必要なのは、「制度」よりも「伴走者」
研修やマニュアルの整備ももちろん大切ですが、 もっとも求められているのは、「一緒に考えてくれる存在」かもしれません。
- 現場の管理者同士で事例を共有できる場
- 判断に迷ったときに立ち返れる教育ツール
- 事務的な負担を軽減できる受講管理システム
こうした“支援の仕組み”があってこそ、管理者は現場で力を発揮できます。
🔸次回予告
次回(第4回)は、 「形骸化する研修──『やったことにする』カスハラ教育の実態」をテーマにお届けします。
年間計画に“載っているだけ”のカスハラ研修が、なぜ現場で機能しないのか? 効果のある研修と、形だけの研修の違いとは? そして、それをどうeラーニングで改善できるのかを解説していきます。
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管理者の「対応の判断」や「教育の負担」にお悩みの方は、 Smart Learn SDのeラーニング教材と支援ツールの導入をご検討ください。 誰かに依存しない、“判断と行動の仕組み”をご提供します。

