集合研修の限界とeラーニングの可能性
介護施設における法定研修といえば、これまでは「会議室に集まって受ける集合研修」が主流でした。 しかし、働き方が多様化し、施設運営が複雑化する中で、この形式に限界を感じる声が増えてきました。
- 「みんなの予定が合わない…」
- 「せっかく来てもらったのに急な呼び出しで離脱…」
- 「夜勤明けに研修、集中できるはずもない…」
- 「動画流しているだけで、理解しているか不明…」
今回は、集合研修という形式がなぜ限界を迎えているのかを構造的に整理し、eラーニングがどのようにその壁を越えられるかを具体的に掘り下げます。
■ 集合研修はなぜ“回らなくなった”のか
介護現場では今なお、「とにかく集めて、やって、サインをもらう」形式の集合研修が広く行われています。
しかし、その運用には以下のような課題が付きまといます。
① シフトが合わない
早番・遅番・夜勤など、勤務形態が多様な介護現場では、全員が同じ時間に集まることはほぼ不可能です。
加えて、職員の人数が少ないほど、誰かを会議室に呼び出す=現場の手が足りなくなる、というジレンマが発生します。
② 時間が確保できない
集合研修を行うには、準備・実施・片付けの時間が必要です。現場では突発的な対応も多く、事前に立てた研修スケジュールが直前で崩れることも珍しくありません。
③ 受講環境が不公平
集合研修の時間帯や曜日によっては、一部の職員に負担が集中します。たとえば、
- 夜勤明けで眠気の中参加
- 子育て中で日曜研修に参加できない
- 短時間パートで時間外に呼ばれる
このような状況は、「形だけの参加」「とりあえず出席」が横行しやすく、学習効果が下がる一因となります。
④ 教える側の負担が大きい
研修の準備や資料作成、当日の進行まで、すべて現場職員が担うケースも多く、他業務との兼務では物理的にも精神的にも限界があります。
■ それでも集合研修にこだわってしまう理由
現場では「研修=集合研修」と考えている施設が多くあります。その理由としては、
- 長年この形式でやってきた慣習
- 「顔を見て教える方が安心」という感覚
- eラーニングを導入する方法が分からない
- そもそも代替手段があると思っていない
などが挙げられます。
しかし、「なんとなくやっている研修」が本当に職員の成長につながっているか、今こそ問い直す必要があります。
“全員が、確実に、学びきれる”仕組みこそが、いま求められているのです。
■ eラーニングがもたらす“新しい当たり前”
eラーニングは、「時間・場所・形式」という集合研修の制約を一気に取り払います。 その効果は、単なる“効率化”にとどまらず、教育の公平性と質の向上に直結します。
① 好きな時間に、好きな場所で受講できる
- 出勤前の10分間
- 夜勤明けに休憩室で
- 休日の自宅でスマホから視聴
- スキマ時間で細切れに学習
こうした「自由な学びのスタイル」が可能になります。これにより、受講の機会が“奪われない”環境を整えることができます。
② 全職員に“同じ質の研修”を届けられる
集合研修では講師の説明力や当日の雰囲気に左右されがちですが、eラーニングであれば、
- 専門家が監修した教材
- 視覚・聴覚に訴える動画形式
- クイズや確認テスト付きの構成
といった「標準化された高品質コンテンツ」を、誰にでも平等に届けることができます。
③ 何度でも、繰り返し学べる
苦手なテーマや難解な内容も、動画で繰り返し視聴でき、理解度を高めることができます。
外国人スタッフや高齢の職員にとっても、スロー再生や字幕などが理解をサポートします。
④ 受講状況が管理画面で“見える”
管理者は、誰がいつどこまで受講したかをリアルタイムで把握できます。
未受講者へのリマインドも自動で行えるため、集合研修のように「誰が来てたか覚えてない」「紙の出欠票がどこかに行った」などのトラブルも防げます。
■ 現場が変わる3つの効果
● 職員:自分のペースで学べるようになる
→ 「やらされる」研修から、「自分のタイミングで学べる」研修へ。
● 管理者:調整・記録・フォローの負担が軽減
→ 「研修をやったはず」ではなく「履修率100%が見える」状態へ。
● 施設:加算や実地指導に対する体制強化
→ 「書類で証明する研修」ではなく、「記録と証跡が揃った仕組み」へ。
■ 集合研修から“選べる研修”の時代へ
eラーニングが集合研修のすべてを代替する必要はありません。
重要なのは、「選べる」ということ。
たとえば、
- 一部テーマは集合で対話形式に
- 基礎知識はeラーニングで事前学習
- 未受講者は後日オンラインで補完
- 年度末の再受講はオンデマンドで対応
このように、複数の手段を組み合わせる“ハイブリッド型”の運用が可能になります。
集合研修の良さも活かしつつ、eラーニングの柔軟性を取り入れることで、より実効性の高い研修体制が実現します。
次回(第6回)は、「“やらされ研修”から“考える研修”へ──学びのモチベーション設計」をテーマに、法定研修を単なる義務ではなく、自律的な学びにつなげるための仕組みと工夫を解説します。
OJTをより効果的に活かすためには、準備された知識の土台が欠かせません。
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