「『対応』は個人任せでは続かない──属人的対応の限界」
こんにちは。前回は、介護施設におけるカスタマーハラスメント(カスハラ)が職員に与える深刻な影響と、それに対応するための研修の必要性についてお話ししました。 今回はもう一歩踏み込んで、「カスハラへの対応が現場の個人任せになってしまっている現実」について考えてみたいと思います。
経験者に頼る職場構造
まず最初に、あなたの施設ではこんな光景を見たことがないでしょうか。
- 「ああいう家族対応は、◯◯さんがうまいから任せよう」
- 「あの利用者は、ベテランの△△さんでないと無理」
- 「新人が対応したらまたクレームになるから、誰か慣れてる人で」
一見、役割分担のように見えますが、これは“属人的対応”の典型です。 特定の職員の技術や性格、経験に依存し、対応の再現性がありません。
こうした属人的な対応は、短期的には“なんとかなる”のですが、 中長期的には、職場全体のリスクを高めます。
「察する文化」が職員を追い詰める
属人的対応が続くと、職場には“なんとなくの察し”が蔓延します。
- 「あの家族、今週機嫌が悪いから、気をつけよう」
- 「言い返すと面倒になるから、頭を下げとこう」
- 「今日も理不尽なクレーム、でもどうせ我慢するしかない」
こうした“空気を読む”文化が強くなると、次第に報告や相談が減っていきます。
なぜなら、「自分が我慢すれば済む」と思い込まされているからです。
我慢が連鎖する職場
ここで忘れてはならないのは、我慢は引き継がれるということです。
新人職員は、先輩の対応を見て学びます。 その先輩が、理不尽な言動にひたすら耐えている姿しか見ていなければ、 新人も「これは我慢するものなんだ」と思ってしまいます。
こうして、“声を上げない風土”が当たり前になっていきます。
しかも、その“我慢”は、数値化されず、見えません。 ある日突然、退職届が出されて、ようやく「限界だったのか」と気づくのです。
管理者の役割とジレンマ
管理者側にとっても、属人的対応は厄介です。
ある職員に負担が偏る → でも他に任せられる人がいない → 結局、経験者が対応する → 他の職員は育たない → また経験者にしわ寄せがいく
この負のループが、組織の成長を止めてしまいます。
さらに、カスハラの対応は“感情”が伴うものです。 管理者が「現場の空気」に流されてしまい、対応の判断を曖昧にすると、 組織としての一貫性が失われていきます。
「仕組み」がなければ、再現性は生まれない
属人的対応から脱却するには、対応を「仕組み」にすることが不可欠です。
- どのような言動がカスハラに該当するのかを、具体的に定義する
- 発生時の対応手順(報告→共有→記録→対応)を整備する
- 対応の判断基準を明文化して、ブレない軸を持つ
- 誰が対応しても同じ初動が取れるよう、シナリオやテンプレートを用意する
これらは、一朝一夕にできるものではありませんが、 まずは「施設全体で対応力を育てていく」という意思と方針を、明確にすることが出発点になります。
「見える化された教育」が支える土台に
そこで効果を発揮するのが、「eラーニングによる仕組み化された教育」です。
- 全職員が同じ教材でカスハラ対応の基本を学ぶ
- ケースベースで“こういうときどうする?”を考えさせる
- マニュアルや対応フローのポイントを動画で共有する
- 自学自習で繰り返し見られる環境を整える
- 受講履歴が残ることで、教育の到達度が確認できる
これらは、現場の属人化を防ぎ、組織としての「対応力」を底上げする効果があります。
組織の対応力は、現場の安心感に直結する
繰り返しますが、個人任せの対応では、いつか限界が来ます。
- 経験者が辞めたらどうなるのか?
- 担当者が異動したらどうなるのか?
- 現場に迷いが生じたとき、拠り所になるものはあるのか?
こうした問いに、明確に「YES」と答えられるためには、 対応の属人化を脱し、誰が見てもわかる形で“施設としての方針”を明文化・教育しておくことが欠かせません。
🔸次回予告
次回(第3回)は、 「管理者が抱え込む負担と不安──相談されても動けない現実」をテーマにお届けします。
被害報告を受けた管理者が「どう対応してよいかわからない」「上に相談しても動いてくれない」といった“板挟みの構造”と、支援体制のあり方について、現実に即して考えていきます。
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