「入職時だけ」の教育では、現場は守れない
eラーニングを活用した入職時オリエンテーションの必要性と運用方法について、ここまでご紹介してきました。 しかし実際の介護現場では、「入職時に一度教えただけ」では不十分な場面が多々あります。
- 一度教えたルールが、しばらくして守られなくなる
- 時間が経って教育内容を忘れてしまう
- 異動や勤務形態の変更で、新たな適応が求められる
- トラブルやミスが発生し、再指導が必要になる
そうしたとき、再び同じ説明を一から繰り返すのは、現場にとっても教育担当者にとっても大きな負担です。
そこで今注目されているのが、“学び直し”の仕組みとしてのeラーニングの再活用です。
再教育・再確認の3つの活用場面
① トラブル・インシデント発生時の再学習
介護現場では、ヒヤリ・ハットやクレーム、情報漏洩など、さまざまなインシデントが発生します。
たとえば:
- 職員が利用者の個人情報を含む書類を無断で持ち帰ってしまった
- 勤務時間中に無断でスマートフォンを使用して注意を受けた
- ハラスメントに近い発言が問題視された
こうした場面で、「ただ叱る」「反省を求める」だけでは再発防止にはつながりません。
このとき、「該当するモジュールを再視聴してもらう」という対応が非常に効果的です。
活用例:
- モジュール⑤:個人情報保護と情報セキュリティ
- モジュール⑥:ハラスメント防止と相談体制
- モジュール②:就業規則と労働条件の要点
本人の理解度を確認したうえで、「なぜダメだったのか」「どうすべきだったか」を明文化して再指導することで、感情的な注意ではなく、教育的な対応が可能になります。
② 異動・役割変更時のルール再確認
施設内での配置換えや、夜勤→日勤、パート→正職員など、勤務形態が変わることもあります。 このような変化のタイミングでも、ルールの再確認は欠かせません。
たとえば:
- 夜勤専従職員が日中のチームケアに加わるようになった
- リーダー的立場になり、部下指導の責任を担うようになった
- 本部や他部署への異動で、新たな就業環境に移行した
こうしたケースでは、eラーニングのモジュールをもう一度見てもらうことで、
- 今一度、自身の行動を整理できる
- 他者に伝える立場としての基礎を再確認できる
- 新たな業務への理解が深まる
といったメリットがあります。
③ 復職・中断からの再スタート
育児休業や介護休業、体調不良による休職からの復帰時には、職場のルールや環境が変わっていることもあります。 「以前はこうだったけど、今はどうなの?」という状態で復職する職員に対して、eラーニングは最適です。
- 通勤ルールや手当の改定
- 新しいシフト申請方法
- ハラスメント相談窓口の変更
- コロナ対応などの感染症対策アップデート
すでに入職済みの職員に対しても、「知識のリフレッシュ機会」として自然に学び直せるのがeラーニングの魅力です。
「繰り返せる」「戻れる」教材は財産になる
教育は“その場限り”ではなく、“必要なときに戻れる”ものへ
- 一度しか伝えない教育
- その場の感情や雰囲気で終わってしまう指導
これでは、職員の中に知識や意識が残りません。 eラーニングは、「いつでも見返せる教材資産」として、施設の教育インフラとなります。
活用の実際:職員の声
「あのときの説明、なんとなくしか覚えてなかったけど、動画を見直してスッキリしました」 「新人に教えるとき、まず自分が再確認できたのがよかった」 「管理者から再視聴を促されたとき、叱られたというより、ちゃんと“学び直そう”と思えた」
再視聴が“懲罰”ではなく、“学習と信頼回復のチャンス”として認識されれば、教育が現場の安心感にもつながります。
“教育の資産化”が、採用や離職防止にも効く理由
面接の場面でもアピールできる
「入職時には動画でルールを確認できるようになっていて、安心して働けますよ」 と伝えることができれば、求職者にとっても非常に心強い材料になります。
離職を防ぐ“つながり”の装置として
eラーニングは、職員と施設の“約束の可視化”でもあります。
- どう働いてほしいか
- どんな支援を受けられるのか
- 何かあったときに、どうすればよいか
こうした情報が「動画として残っている」ことで、職員は孤立せず、自分の行動を正しく見つめ直す材料を持つことができます。
まとめ:eラーニングは“その時だけ”のツールではない
- トラブル時、異動時、復職時の再教育ツールとして活躍
- 教育担当者の負担を減らしながら、質の高い再確認が可能
- “学び直しの文化”が施設全体の信頼力を高める
eラーニング=動画教育=新入職員向けというイメージを超えて、 「継続的に学べる教育インフラ」として育てていくことが、これからの教育の鍵となります。
次回(最終回)予告:教育が施設を変える
──「仕組みとしての学び」が未来を拓く
連載最終回となる第8回では、eラーニングを軸にした教育の仕組み化が、 どうやって職員の安心、利用者の満足、施設の信頼につながっていくのかを総括しながら、導入を迷う施設へのメッセージをお届けします。
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