やって終わりにしない
制度として教育を根づかせるための工夫とルールづくり
eラーニング、気づけば「やったつもり」になっていませんか?
eラーニングによる入職時オリエンテーションを導入して、最初はうまくいったものの、 数か月経つとこんな状況に戻っているケースが少なくありません。
- 新人に動画を見せるタイミングが曖昧に
- 「教育担当者が変わって説明がバラついた」
- モジュールが古くなったのに見直されていない
- 受講記録の管理がされず、履歴が残っていない
このように、せっかくの仕組みが風化していく最大の理由は、 eラーニングが「制度」ではなく「一時的な施策」として運用されていることにあります。
今回は、eラーニングを“施設全体の教育の一部として、根づかせていく方法”を紹介します。
教育を“仕組み化”する3つの基本方針
① 明文化する:就業規則や教育マニュアルへの反映
まずは、eラーニングの実施が“個人の判断”や“その場の裁量”に依存しないように、 ルールとして明文化することが重要です。
例:
- 就業規則に「入職後、定められた教育を受ける義務がある」と明記
- 教育マニュアルに「eラーニング受講→理解確認→OJT移行」のフローを明示
- チェックリストに「受講済/テスト合格/面談完了」の欄を設定
「最初に必ず通る手順」として認識されれば、教育が自然に組織に組み込まれます。
② 記録する:受講履歴・理解度の見える化
どれだけ素晴らしい教材を用意しても、「誰が、いつ、何を学んだか」が記録されなければ教育効果は証明できません。
LMS(学習管理システム)を使えば、以下のような記録が自動で蓄積されます:
- 視聴完了日・再生回数
- テストの点数・合格回数
- 全体の受講状況一覧
LMSが使えない施設では、紙ベースでも「視聴確認表」「テスト回答記録」を残しておきましょう。 これは、労務トラブルや監査対応でも“教育の証拠”として有効です。
③ 見直す:年度ごとの更新ルールをつくる
内容が古くなっても使い続けてしまう──これもよくある問題です。 とくに、法令や制度が関わる教育内容は定期的なアップデートが不可欠です。
推奨する更新サイクル:
- 年1回、年度初めに内容見直し(法改正・就業規則改訂に応じて)
- 必ず「改訂日」を記録・表示(受講者が最新版かを把握できる)
- 改訂履歴を記録して、前バージョンとの違いも共有
教材に「最終更新日」を表示するだけでも、教育の信頼性は格段に高まります。
制度化の工夫:こんな取り組みで定着が進む
チェックリストの活用
「教育が完了したかどうか」を一覧で確認できるチェックリストは、制度としての運用を助けます。
項目 | チェック欄 | 備考 |
LMSログイン案内 | ✔ | 初日に実施 |
モジュール①~⑧視聴 | ✔ | 各日に記録 |
理解度テスト(80点以上) | ✔ | LMSスコア記入可 |
面談または質疑応答セッション実施 | ✔ | 実施者記名 |
OJT責任者への引き継ぎ完了 | ✔ | 担当記入 |
この表を紙で運用してもよいですし、Googleスプレッドシートで共有してもOKです。
教育実施報告の義務化
- 新人職員の受け入れ報告と同時に、教育実施報告書の提出を義務化
- 管理者による教育確認のサイン欄を設ける
- 定期会議で進捗をチェックし、問題点を洗い出す
“やっているつもり”をなくすための仕組みとして機能します。
教育担当者同士の情報共有
現場ごとに担当者が異なる場合、以下のようなミーティングや共有が有効です。
- 月1回の「教育担当者ミーティング」
- チャットツールでの“教育進捗チャンネル”開設
- 成功事例・失敗事例の情報交換
「自分だけで抱えない」ことで、教育の質も安定していきます。
教育が“文化”になるまで──職員の声から始めよう
制度は上から定めるだけでは根づきません。 実際には、「やらされている教育」ではなく、「やってよかった教育」にしなければ継続しません。
以下のような職員の声を吸い上げる仕掛けが効果的です。
- 視聴後アンケート:「どこが分かりやすかったか/難しかったか」
- 月1回の「教育に関するひとことBOX」
- 年度末の「eラーニング改善アイデア募集」
こうした声を受けて教材を更新すれば、職員の当事者意識も高まり、教育が施設文化として育っていきます。
まとめ:「教育を仕組みにする」ことが、現場を守る
- 教育は「やる・やらない」ではなく、「どう仕組むか」の時代
- eラーニングを制度に組み込み、運用記録と見直しルールを整える
- 担当者間の連携と、職員の声を反映する工夫が継続の鍵
いま、介護施設には「教えられる人がいるか」ではなく、 「誰でも教えられる仕組みがあるか」が問われています。
次回予告:再教育・離職防止・信頼回復──“学び直し”に活きるeラーニングの可能性
次回は、入職時だけでなく、復職・異動・トラブル発生時などにeラーニングをどう再活用できるか、 教育の“資産化”という視点で深掘りしていきます。
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