無理なく回す運用スケジュール

eラーニング導入初期の落とし穴とその回避法

「動画は作った。でも、見てもらえない」──よくある導入のつまずき

eラーニングを導入する施設が最初に直面する課題の一つは、「動画を見てもらえない」という問題です。

  • 現場が忙しくて、視聴の時間を確保できない
  • 職員が動画に慣れておらず、うまく操作できない
  • 端末やWi-Fi環境が整っていない
  • 誰が見たか、いつ見たかを把握できない

教材を用意するだけでは、教育は回りません。
重要なのは、「どのように運用していくかの設計=スケジュールの仕組み」です。

本稿では、eラーニングをスムーズに現場に根づかせるための視聴スケジュールの設計方法、運用上の注意点、そしてよくある落とし穴とその回避策について解説します。

「最初の3日間」で基本を押さえる:モデルスケジュール

まずは、入職初期のスケジュールモデルをご紹介します。

3日間モデル(例)

日程実施内容
1日目・LMS(学習管理システム)のログイン案内

     ・モジュール①:施設理念と概要 

     ・モジュール②:労働条件と就業規則

| 2日目 | ・モジュール③:勤務ルール
・モジュール④:安全衛生
・モジュール⑤:個人情報保護 |
| 3日目 | ・モジュール⑥:ハラスメント防止
・モジュール⑦:報連相・チーム連携
・モジュール⑧:福利厚生
・確認テスト+面談 or 質問対応時間 |

ポイント

  • 1日2~3本、1本5~10分以内の内容で区切ることで負担を軽減
  • できるだけ「日勤シフトに組み込む」形でスケジュール確保
  • 確認テストで理解度チェック → フォロー面談やOJT引き継ぎへスムーズにつなげる

運用を成功させる3つの鍵

視聴環境の整備

  • 端末の確保:共用PC/タブレット1台でもOK(Wi-Fi推奨)
  • イヤホンまたは字幕対応:周囲の業務に配慮しつつ視聴可能
  • 操作支援:ログイン方法や再生操作を紙や動画で説明(操作が苦手な職員向け)

導入時には、最初の1人目・2人目のフォローが重要です。
「見方が分からなかったから後回しになっていた」──これを避けるには、最初のサポート体制が鍵となります。

進捗管理と声かけ体制

LMS(学習管理システム)を使えば、誰が何をどこまで見たかが記録されます。
もしLMSがない場合でも、簡単なチェック表や視聴報告書を併用すれば代替可能です。

  • 未視聴者には管理者から直接声かけ
  • 「忙しい時間を避けて」「夜勤明けに軽く見るだけでOK」など柔軟対応
  • 管理者が「見てもらいたい」という姿勢を示すことが大切です

視聴後のフォローで学びを定着

視聴が終わったら、それで終わりにしないことも重要です。

  •  質疑応答や1on1面談をセットで実施
  •  内容に関する振り返り質問を1~2問
  • 「不安な点はありましたか?」と聞くこと自体が教育になる

映像+対話の組み合わせで、eラーニングの効果は倍増します。

導入初期のよくある落とし穴と対策

落とし穴回避法・対策
動画が長すぎて集中力が続かない1本5~10分、分割して短く設計する
誰がいつ見るかが決まっていない視聴スケジュールをあらかじめ組み込む
スマホでは見づらく挫折されるタブレットやPC、画面サイズに合う設計に
忙しいからと視聴が後回しになる初日の午前に「見る時間」を確保する
管理者も何を見せているか把握していない全モジュールを管理者自身が一度視聴する

フレックス型導入も可能──変則勤務者・外国人職員への配慮

「3日間モデルが無理」という現場でも、1週間以内で視聴完了のフレックス導入は十分に可能です。

  • 夜勤専従者には夜勤明けの30分を視聴時間に設定
  • パート職員は勤務日ごとに1本ずつ割り当て
  • 外国人職員には「やさしい日本語」「字幕・ピクトグラム」でサポート

また、「1人で見るのが不安」という声には、2人一組で一緒に見るグループ視聴形式も有効です。

記録と制度への組み込みで続く仕組み

eラーニングを「単発の対応」で終わらせないためには、以下のような記録と制度づくりが効果的です。

  • 受講記録シート/チェックリストを用意
  • 受講完了を就業規則やマニュアルで明文化
  • LMSの記録を保管(最低2~3年間推奨)

これにより、教育の実施証明や行政監査・労務トラブルへの備えにもなります。

まとめ:「教育が止まらない仕組み」を設計する

  • 教材を作るだけではなく、「いつ」「誰が」「どこで」見るかを明確に
  • 視聴後のフォローや対話も含めて、教育効果が完成する
  • 最初の運用がうまくいけば、あとは“自走する仕組み”へと育つ

「忙しいからeラーニングは難しい」ではなく、
「忙しいからこそ、eラーニングを使う」発想への転換が求められています。

次回予告:やって終わりにしない

制度として教育を根づかせるための工夫とルールづくり

次回は、eラーニングによる入職教育を“単発”で終わらせず、
施設の教育制度として定着させていくためのルール設計・運用の工夫をご紹介します。

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