これだけは伝えよう
eラーニングに盛り込むべき8つの基本モジュール
「何を教えるべきか」が曖昧なまま、始まっていませんか?
eラーニングを導入する際に最初にぶつかるのが、「で、何を教えればいいの?」という悩みです。 動画教材を作るといっても、内容が決まっていなければ、進めようがありません。
一方で、現場ではこんな声もよく聞かれます。
- 「就業規則はあるけど、どこを説明すればいいのか迷う」
- 「労働条件は伝えたけど、それだけで十分なのか?」
- 「ハラスメントって、どこまで話すべき?」
本記事では、入職時のeラーニング教材に盛り込むべき「8つの基本モジュール」をご紹介します。 それぞれ、1本あたり5~10分程度の動画またはスライド教材で構成することを想定しています。
eラーニング基本構成8モジュール
モジュール1:施設の概要と理念・行動指針
「どんな施設で働くのか」を最初に伝えることで、新入職員は安心感を持ちます。
- 法人の歴史、規模、運営方針
- 介護に対する理念・ミッション
- 職員に期待する姿勢・行動の基本
特に理念は、「現場ではこういうことが大切にされている」という価値観を明示するもの。 単なる「会社紹介」ではなく、「心構えづくり」の第一歩です。
モジュール2:就業規則と労働条件の要点
トラブル防止の観点から最も重要な項目です。
- 雇用形態/給与の締め日・支払日
- 労働時間/休憩/休日の取り扱い
- 有給休暇の取得ルール
- 懲戒規定、服務規律
「紙を渡すだけ」では不十分。 どの項目が特に重要か、口頭と映像で補足して伝えることで、“納得して働く”意識が生まれます。
モジュール3:シフト・勤務ルール・遅刻欠勤の対応
新人が戸惑いやすい「勤務まわり」の具体的なルールを整理して伝えます。
- シフトの確定と希望提出の流れ
- 遅刻・欠勤・早退の連絡方法
- 引き継ぎ・交代勤務の注意点
このモジュールは「現場トラブルの芽」を摘む効果が高く、外国人スタッフや未経験者にも非常に重要な単元です。
モジュール4:安全衛生・災害対応・感染対策
労働基準法・安全衛生法に関わる、必須項目の一つ。
- 身体介護における安全な動作(腰痛予防など)
- 感染症対応(手指衛生・防護具の使い方)
- 災害時・火災時の避難行動と連絡体制
「こうすれば防げた事故」が多い分野だからこそ、事前にしっかりと教育が必要です。
モジュール5:個人情報保護と情報セキュリティ
- 利用者・職員の個人情報の取り扱いルール
- メモ書き・書類・端末の管理方法
- SNSへの投稿禁止・情報漏洩対策
「悪気なくやってしまう」トラブルの多くは、情報管理のルールを明確に教えていないことに起因します。
事例紹介を交えながら、「何がアウトか」を具体的に伝えましょう。
モジュール6:ハラスメント防止と相談体制
いま最も社会的関心の高い領域です。
- パワハラ・セクハラ・マタハラの定義と具体例
- 職場内の相談窓口と対応方針
- 行為者への処分規定・再発防止策
eラーニングでは、「こんな言動がハラスメントに該当する」という実例を交えた構成が効果的です。
モジュール7:報告・連絡・相談とチームワーク
現場で新人がつまずきやすいのが、「どのタイミングで、何を、誰に報告すればいいのか」という基本行動。
- トラブル発生時の報告の仕方
- 情報共有・申し送りの重要性
- 先輩職員との関係づくりのヒント
「報連相は大事」と言うだけではなく、その“具体像”を共有する教材にすることがポイントです。
モジュール8:福利厚生と支援制度
職員の安心感・モチベーションにつながる要素。
- 各種手当・通勤交通費など
- 健康診断、予防接種、メンタルヘルス対応
- 資格取得支援や研修制度
- 休職・復職・育児介護制度
「こういう制度があるなら安心だな」と思ってもらえる内容を端的に紹介しましょう。
モジュール構成の工夫:短く、わかりやすく、繰り返し学べるように
8つすべてを一度に長く説明する必要はありません。 むしろ、1本5~10分程度の短さで「あとから何度でも見直せる」ことが重要です。
また、それぞれのモジュールに以下の要素を入れることで、理解定着が高まります。
- 導入クイズ:「これはOK?NG?」など関心を引く質問
- 図解やイラストで視覚的に
- ナレーションで補足しながらポイントを強調
- 最後にミニテストや振り返り質問
導入現場の声:「必要なことだけ、でも丁寧に」
実際に導入した施設からは、以下のような声が寄せられています。
「1つ1つが短くて、集中して見られました」 「特にハラスメントや勤務ルールの説明が役に立ちました」 「職員によって説明の仕方が違ったが、動画で揃えることでトラブルが減った」 「“紙を渡されて終わり”と感じていた不満がなくなった」
eラーニングは、「必要なことを、必要なときに、必要な形で届ける手段」です。 そして、それは「教える側の手間を減らし、伝わる内容の質を上げる」両立が可能な方法なのです。
次回予告:無理なく回すには?
次回は、eラーニングを「実際に現場でどう運用するか」にフォーカスし、 忙しい施設でも無理なく回せる視聴スケジュールの設計と、導入初期に起きがちな落とし穴の回避策をご紹介します。