なぜeラーニングなのか? いま介護現場で求められる“教育の仕組み化”
現場に人はいても、「教える時間」がない
介護現場の多くでは、「人手不足」は日常です。 そして、ようやく新しい職員が入っても、教育に時間を割く余裕がありません。
- 初日からすぐ現場に入ってもらいたい
- 自分も人手が足りず、付きっきりで教えるのは難しい
- 「とりあえず動きながら覚えて」となってしまう
──このような状況は決して珍しくありません。
ですが、だからといって「教えないまま現場に放り込む」ことが、どれほど大きな不安とストレスを新入職員に与えるかを、私たちは知っておく必要があります。
職員の早期離職には、実は「現場が合わなかった」以上に、「何も教わらず、わからないまま仕事を始めさせられた」という背景があることが多いのです。
不定期な入職、多様な人材──変化する現場と教育のズレ
かつては4月や10月など、入職時期がある程度まとまっていたため、集合研修を設定しやすい環境もありました。
しかし現在の介護業界では、不定期な入職・補充採用が主流です。
- 1人が辞めたらすぐに1人採用
- 正職員・パート・夜勤専従・短時間勤務者など多様な働き方
- 外国籍スタッフ・高年齢層の職員の増加
このように、一律の集合研修が難しい時代になっています。
それなのに、従来と同じ「集合で教える/誰かが時間を作って対応する」方法を続けていては、現場はまわらなくなります。
では、どうすればよいのか?──解決策は「仕組み化」
答えはシンプルです。 「教えること」を仕組みにして、現場に依存しない教育体制を整えること。
ここで登場するのが、「eラーニング(映像学習)」です。
eラーニングを使えば、教育の属人化から抜け出し、誰が、いつ入職しても、同じ水準の教育を受けられる体制をつくることができます。
eラーニングで得られる5つの効果
① 「伝えるべきことを、確実に伝える」
動画教材であれば、教えるべき内容が固定されているため、 誰が視聴しても同じ情報を、同じ順番で、確実に受け取れます。
「担当者によって言っていることが違う」
「Aさんには説明したけど、Bさんには忘れていた」
といった“ばらつき”や“伝え忘れ”のリスクをなくせます。
②「繰り返し見直せる」
新人職員は、最初の数日は不安と緊張でいっぱいです。
一度聞いたことをすべて覚えるのは困難でしょう。
でも、eラーニングであれば、
- 「忘れたところだけもう一度見る」
- 「勤務終了後に、家で確認する」
- 「動画を止めて、メモを取りながら学ぶ」 といった形で、自分のペースで繰り返し学習できます。
③「記録に残る」
視聴履歴やテスト結果が記録されることで、
- 受講の有無が明確になる
- 法令説明の実施証明にもなる
- トラブル発生時の説明責任の裏付けになる
──という管理面でのメリットがあります。
とくに労働契約法やハラスメント防止関連の法令では、 「説明したという証拠」が問われる場面が今後ますます増えていきます。
④「誰でも、いつでも、同じ内容を学べる」
外国人スタッフや夜勤者、シニア層など、働き方も背景も多様化する中で、 時間や場所に縛られず学べることは、大きな意味を持ちます。
- 夜勤明けに見る
- 日本語字幕を付けて内容を理解しやすくする
- 操作が簡単な端末で受講できる
こうした工夫が、多様な人材の受け入れを可能にする基盤にもなります。
⑤「管理者の負担を減らす」
「毎回、同じ説明を何度もしている」 「急な入職で時間を取られ、他の業務が止まる」
──そんな状態から解放されます。 一度、eラーニング教材を整備してしまえば、あとは「視聴させる」だけ。
時間的・精神的な負担が軽減され、現場の教育が安定します。
導入が進んでいるのは“意識の高い”施設ではない
eラーニングと聞くと、「うちにはまだ早い」「大きな法人でないと難しい」と思うかもしれません。 しかし、実際に導入が進んでいるのは、人手も予算も限られた“普通の現場”です。
なぜなら、そうした施設ほど
「教える余裕がない」「ミスできない」「人がすぐ辞める」からこそ、
先に“仕組み”で守らなければならないと気づいたからです。
教育は、組織の「余裕」があるから行うのではなく、 余裕がないからこそ、仕組みでまわすべきなのです。
eラーニングは「教え方の自動化」ではない
最後にひとつ、誤解を解いておきたいのは、 eラーニングは「教育の代行」ではないということです。
正確には、教育の基盤=共通認識の土台を“整える”手段です。
- 法令
- 就業規則
- 勤務ルール
- ハラスメント防止
- 情報管理
こうした最低限の「共通語」を全員に揃えたうえで、
実務や現場文化はOJTで身につけていく
──
eラーニングは「現場教育を支える柱」なのです。
次回予告:法令の視点から考える「説明責任」とeラーニングの役割
次回は、労働契約法・労働基準法・個人情報保護法などの法令をもとに、 なぜ入職時教育が“義務”と言ってよいほど重視されているのか、 そして、eラーニングがその説明責任をどう支えるのかを掘り下げます。
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