OJTだけで大丈夫?いま見直される「入職時オリエンテーション」のあり方
「入職3日で辞めてしまった職員がいて…」
ある施設の管理者の声です。 このような話、皆さんの現場でも耳にしたことがあるのではないでしょうか。
介護の現場では、入職したばかりの職員がすぐに辞めてしまうケースが決して珍しくありません。
「現場が忙しすぎて十分に説明できなかった」
「人によって教える内容がバラバラだった」
「最初に不安を解消できなかった」
──そうした後悔を、どこかで一度は感じたことがあるはずです。
入職時の初期対応、特にオリエンテーション(入職初期教育)は、スタッフの職場定着と安心感に直結する大切な機会です。 しかし実際には、忙しい現場で形式的に済まされてしまったり、属人的な対応になっていたりするのが現実です。
本連載では、そうした「入職教育の今」を見つめ直しながら、eラーニングという新たな手段を使って、“仕組み化された教育”を実現する方法をご紹介していきます。
「OJTで教えれば十分」は本当か?
介護施設でよく聞かれるのが、「最初は現場でOJTで教えてますから」という声。 OJT(On-the-Job Training)は、業務の中で直接指導を行う実践的な教育手法として、多くの職場で導入されています。
もちろん、OJTには多くのメリットがあります。 実際の現場に即した知識が身につきやすく、経験豊富な職員が新人を直接指導することで、即戦力としての育成も期待できます。
しかし一方で、OJTだけに依存することには大きな限界もあります。
- 担当する指導者のスキルや伝え方に依存し、内容にムラがある
- 多忙な時間帯には十分に教える余裕がなく、後回しになりがち
- そもそも「何を教えるか」が明文化されていない
たとえば、ある職員には就業規則や労働条件を丁寧に説明したが、別の職員にはほとんど触れなかった。 ある職員にはハラスメント防止について念入りに話したが、他の職員はその機会がなかった──。
そうした“教え漏れ”や“伝え忘れ”が日常的に起きてしまうのが、OJTの属人的な構造です。
教育の「属人化」がもたらすリスク
教育が属人化してしまうと、ただ「覚えるのに時間がかかる」という問題だけでは済みません。 実は、法的・運営的なリスクにも直結していきます。
- 「聞いていない」「知らなかった」と言われると説明責任を果たせない
- ハラスメントや労働条件をめぐるトラブルにつながる
- クレームや事故の背景に「初期教育の不足」が疑われることも
とくに最近は、労働契約法や労働基準法、個人情報保護法、ハラスメント防止法など、職場教育に関わる法令が整備されつつあります。
新たに入職する職員に対して、就業条件や社内ルール、安全衛生、情報の取り扱いなどについて明確に説明することは、「努力義務」ではなく、実質的に必須の対応となっているのです。
つまり、いま現場に求められているのは、属人的ではない「体系化された入職教育」です。
オリエンテーションは「安心の土台」
では、そもそも入職時オリエンテーションとは何でしょうか?
それは、単に会社案内をして、書類にサインをもらう時間ではありません。
新人職員にとって、それは最初に組織との関係性を築く場であり、「ここで安心して働ける」と感じるための入り口です。
- どんな理念で運営されているのか
- どのような行動がルールで、どこまでが許されるのか
- 万が一困ったことがあったら、どこに相談すればいいのか
こうした「安心の土台」をつくるのが、入職時オリエンテーションの本質です。
この土台があるからこそ、職員は現場で自信を持って動けるようになり、定着していくのです。
教育は「仕組み」にしなければ続かない
ここまでお読みになって、「うちでもやらなければいけないと思ってはいたけど…」と感じた方も多いと思います。 ですが、もう一つ、よく聞かれる言葉があります。
「教育の必要性はわかっている。でも、現場が忙しすぎてできない。」
そうです。 現実には、教える余裕がないのです。 それは決して怠慢ではなく、多くの介護現場が抱える構造的な問題です。
だからこそ、教育を「人手に頼らず回る仕組み」にしていくことが求められています。
それを実現するのが、eラーニングという選択肢です。
次回予告:eラーニングという選択肢──教育を「属人化」から「仕組み化」へ
次回は、なぜeラーニングがいま介護現場で注目されているのか、 そして実際にどのような導入効果があるのかを、現場の実態と照らし合わせながらご紹介していきます。
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