教育の仕組み化を導入する際に気をつけたいこと
8回にわたる連載で、OJTとeラーニングの役割や教育の仕組み化についてお話してきましたが、 実際にこれを導入・定着させるには、いくつかの注意点があります。 番外編では、「うまくいく施設」と「形だけで止まってしまう施設」の違いに焦点を当ててみます。
① 教育担当者だけに任せきりにしない
よくある失敗のひとつが、教育の仕組みづくりを「担当者の仕事」として丸投げしてしまうケースです。 教育は組織全体の文化であり、経営者・現場管理者が“自分ごと”として関わることが不可欠です。
導入後も、「使われているか」「効果が出ているか」を定期的に見直す体制を整えましょう。
② 「とにかく導入すればOK」という発想は危険
eラーニングや動画教材は便利な反面、“流すだけ”になってしまうと学習効果は激減します。 動画を見せて終わりではなく、
- 振り返りの時間を設ける
- テストで理解を確認する
- 現場での活用と結びつける
といった仕組みをセットで設計することが重要です。
③ 動画の「質」と「長さ」に気をつける
動画教材を導入する際、長すぎる、専門用語が多すぎる、場面が現場に合っていないといった理由で、 受講者の集中力が続かないことがあります。
「1本あたり5~7分程度」「場面に応じて細かく分ける」「日常に即した例で構成する」など、 視聴者目線での設計が効果を左右します。
④ テストや記録を「チェックのため」にしない
確認テストや視聴履歴を「ちゃんとやってるか確認する道具」として使ってしまうと、
学習そのものが“評価”や“監視”のような印象を与えてしまいます。
本来の目的は、理解度を知ることと、振り返りの材料にすることです。 管理側の使い方にも配慮が必要です。
⑤ 「慣れていない人」こそ丁寧に巻き込む
ITツールやeラーニングに慣れていない職員がいる場合、 「使えない人がいるから、やめよう」と考えるのではなく、 操作サポートや導入支援を含めた“伴走”が大切です。
最初の導入段階で「誰かに聞ける」「一緒に試せる」環境をつくれば、 抵抗感もぐっと下がります。
仕組みを活かすのは、“人”の関わり
eラーニングはあくまで“道具”です。 最終的に学びを支えるのは、現場での声かけや振り返りの時間、共に成長する文化です。
仕組みを用意したうえで、それを活かす風土を育てていくことが、 「人が育ち、残る」組織への鍵になります。
OJTをより効果的に活かすためには、準備された知識の土台が欠かせません。