ベテランの「経験知」を現場全体の財産に変える

「○○さんのやり方が一番スムーズ」
「△△さんは勘がいいから、何かと頼りになる」

そんなふうに、ベテランの技術や経験に頼って現場が回っている――


介護の現場では、よくある光景です。

けれどもそれが「その人にしかできないこと」になってしまうと、
その人がいないと仕事が回らない、という属人化の状態に陥ります。

これでは、チームとしての組織力が育ちません。

属人化はリスクである

属人化とは、“特定の人だけができる”状態を指します。
技術や判断基準がその人の頭の中だけにある状態では、
他のスタッフがその判断を共有できず、結果として現場の判断や対応がブレてしまいます。

そして何より、育成が進まない、再現性がない、という問題が生まれます。

教育を仕組みにするということは、こうした属人化を防ぎ、
経験知をチーム全体の知恵として蓄積・継承していくことに他なりません。

ベテランのやり方を「教材化」するという発想

eラーニングは、単に新人向けの学習だけでなく、
ベテランの技術や工夫を“見える形”で残す手段としても活用できます。

たとえば…

  • ベテランが実演している場面を動画で記録する
  • なぜそうしているのかを言語化するインタビューを加える
  • 判断基準や注意点を明文化し、他者が真似できるように構成する

こうした取り組みは、現場の知を形式知化し、誰でも学べる形に変換するという点で非常に重要です。

言葉にできることは、再現できる

経験知は、言語化しにくいがゆえに再現されにくく、継承も難しいのです。
「見て覚える」「慣れていく」だけでは、属人的な方法にとどまりやすくなります。

eラーニングを通じて、そうした“見て盗む”スキルを明文化し、
動画や教材で「なぜそれをするのか」まで可視化して伝える。
このプロセスが、現場の成熟を支える基盤になります。

暗黙知を、組織の強みに

形式知化された経験は、やがて組織の学習資産になります。
一人の熟練者の力に依存するのではなく、
そのノウハウを共有し、新人や中堅の成長にも活かせる環境づくりこそ、
「持続可能な現場力」の核となるのです。

次回(第6回)は、「継続的な教育こそが、定着と成長を生む」ことをテーマに、
定期学習を仕組みにすることで変わる“働きやすい職場づくり”のヒントをご紹介します。

OJTをより効果的に活かすためには、準備された知識の土台が欠かせません。

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