研修管理者のためのeラーニング導入ガイド
「うちみたいな小規模施設でも使えるの?」
「パソコンが苦手な職員が多いから難しそう…」
「費用対効果があるのか、上司に説明しにくい…」
eラーニングの有用性は理解していても、「導入」となると不安を感じる研修担当者・管理者の声は少なくありません。
特に現場で研修を取り仕切る立場にある方にとっては、「使いやすさ」「運用のしやすさ」「続けやすさ」が導入の可否を左右する重要な要素となります。
今回は、「これからeラーニングを導入してみたい」と考える方に向けて、導入までの流れと考え方を丁寧にご案内します。
■ なぜeラーニング導入は“難しそう”に見えるのか
まず、多くの施設で見られる“導入への不安”の中身を見てみましょう。
① 機械操作への苦手意識
「うちの職員、パソコンが苦手で…」という声は非常に多くあります。
しかし実際には、スマホで動画を見ることに慣れている人がほとんどで、適切に設計されたeラーニングであれば、難しい操作は不要です。
② IT担当者がいない
中小規模の施設では、「導入や設定を任せられるIT人材がいない」という声もよく聞かれます。
ですが、現在の多くのeラーニングプラットフォームは、クラウド型で、導入に専門知識を必要としない仕組みになっています。
③ 管理が複雑そう
「受講管理・テスト結果・履修記録…」と聞くと複雑に思えますが、eラーニングでは一元化された管理画面上で、すべて自動で可視化・記録できます。
紙の一覧表やExcel表で管理するより、むしろ圧倒的に“ラク”なのです。
■ まずは「部分導入」で始めてみよう
eラーニング導入というと「全職員に一斉導入」「すべての研修をeラーニング化」
といったイメージを持たれがちですが、最初から完璧を目指す必要はありません。
おすすめは、“スモールスタート”という考え方です。
● ステップ1:1テーマだけで始めてみる
まずは年間研修の中でも、以下のようなテーマからeラーニングを試すのが効果的です。
- 毎年実施が必要な「虐待防止」「身体拘束の排除」
- 全職員に履修を求められる「感染症対策」
- 知識ベースの内容が中心で、動画学習が向いているテーマ
これにより、「集合研修との違い」や「操作感」を現場で共有できます。
● ステップ2:対象職員を絞って導入する
- 新人職員のみ対象
- 外国人スタッフ向けに字幕付き研修として導入
- 管理職対象のマネジメント研修から開始
といった方法もあります。段階的に拡大することで、無理なく運用を広げられます。
■ 導入時のポイント:3つの“準備しておくこと”
① 誰が何を担当するか決めておく
- 管理者(LMSの管理権限/配信管理)
- 教材担当(施設独自の資料連携がある場合)
- 職員への案内役(導入説明や初回サポート)
一人がすべてを抱えるのではなく、役割を分担しておくとスムーズです。
② 職員に対する“伝え方”を工夫する
- 「受講義務があるからやってください」ではなく、
- 「忙しい皆さんでも、自分のタイミングで学べます」
- 「今年から、わかりやすく、便利な形で研修を受けられます」
といった形で、eラーニングの“便利さ”を前面に出すことが、受け入れを左右します。
③ 研修記録の目的と見せ方を確認しておく
- 誰が受けたのか(履修記録)
- テスト結果や視聴履歴(理解度確認)
- 実地指導や加算要件のための帳票出力
これらがどう記録され、どう出力されるかを事前に確認しておくと、上司や本部への説明もスムーズです。
■ よくある導入後の“つまずき”と対処法
| よくある困りごと | 対処法例 |
| 職員が受講を後回しにする | 自動リマインド機能で受講忘れを防ぐ |
| ログイン方法が分からない | 初回は紙で案内用紙を配布+QRコード活用 |
| 教材が多すぎて混乱する | 年間配信スケジュールを整理し、月単位で通知 |
| テストの点数が低い職員がいる | 再受講が可能な設計にしてフォロー対応 |
| 操作に不安を感じる職員がいる | マニュアル動画や対面サポート体制の整備 |
■ それでも迷うときは「導入の目的」を再確認する
eラーニング導入は、「やるべきことを自動化する」だけでなく、
「現場がより学びやすくなる」「管理が軽くなる」「履修率が上がる」
ことが本来の目的です。
- 紙のチェックリストがいらなくなる
- 教材が毎年自動更新される
- 全員が“受けきれる”環境がつくれる
- 管理画面ひとつで履修状況が一覧で見える
こうした状態を想像しながら、「導入してどう変えたいか」を明確にしておくことが、関係者の納得にもつながります。
■ 「簡単で続けられる」eラーニングの第一歩を
重要なのは、「まず一歩、踏み出してみる」こと。 小さく始めて、少しずつ広げていくことで、現場に合った使い方が見えてきます。
「やってよかった」「もっと早く始めればよかった」── 実際に導入した施設の多くが、そう振り返るのは、eラーニングが“教育の仕組み”として定着する可能性をもっているからです。
次回(第8回・最終回)は、「すべての職員が『受けきれる』施設へ──完全履修のための道筋」と題し、法定研修の最終ゴール=履修率100%を目指す上で、仕組みと運用をどのように整えるかを総括します。
OJTをより効果的に活かすためには、準備された知識の土台が欠かせません。
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