教材が追いつかない ~情報更新とコンテンツの質の問題

法定研修を実施しようとしたとき、まず立ちはだかるのが「教材どうする?」という壁です。

  • 去年の資料を流用していいのか分からない
  • 研修担当者が作ったパワポが退職とともに消えた
  • 国の指針が変わったけど、どう反映すればいいのか
  • 同じ講義をしても、伝わった感じがしない

こうした教材にまつわる“現場のリアル”は、ほとんどの介護施設に共通する悩みではないでしょうか。
本稿では、法定研修に求められる「教材の質」と「更新性」に焦点をあて、それがなぜ現場で実現しにくいのか、そしてeラーニングという仕組みがどのようにその課題を解決しうるかを掘り下げます。

■「教材問題」は、実は現場の“知的インフラ”問題

介護施設では、日々の業務に追われながら、法定研修を滞りなく実施する必要があります。そのため、研修担当者の多くは以下のような対応に追われています。

  • インターネットから資料をかき集めて組み立てる
  • 他施設で使われている資料を借りてくる
  • 以前の担当者のデータを探して手直しする
  • 社内資料を何とかつなぎ合わせて印刷する

しかし、これらはあくまで“応急処置”です。制度や法律の改正があるたびに一から作り直す余裕もなく、「とりあえず回す」が習慣化してしまい、結果的に内容が陳腐化していく。これが、教材の更新が追いつかない構造的な問題です。

■「更新されていない」教材のリスクとは

古い情報のまま研修を実施することには、以下のようなリスクがあります。

① 法令・制度改正に対応していない

法定研修の多くは、厚生労働省や自治体のガイドラインに基づいて実施されます。これらは定期的に見直されており、最新の制度に即していない教材を使用すると、形式上やったつもりでも、実質的には未履修扱いとされるリスクがあります。

たとえば、

  • 身体拘束・虐待防止の法的定義が変更された
  • 感染症対策の標準予防策が改訂された
  • 介護職員の倫理規範に新たな項目が追加された

こうした点を教材が反映していなければ、加算要件や監査の際に問題となりかねません。

② 教材の“伝わりにくさ”が研修の質を下げる

情報が更新されていたとしても、その伝え方が職員にとって理解しづらければ意味がありません。

  • 説明が抽象的すぎてピンとこない
  • 法律用語ばかりで頭に入らない
  • 文字ばかりのスライドで退屈になる
  • 講義が一方通行で眠くなる

これでは、職員に「受けた実感」「学んだ実感」が残らず、研修が形式的なものになってしまいます。

■ なぜ、質と更新性の高い教材が現場で作れないのか

教材づくりは、単にスライドを作ることではありません。制度を正確に理解し、現場の事例に合わせて、伝わりやすい表現でまとめ、かつ他者が再利用できるように整理する──これは知的労働の集合体です。

しかし、介護現場では次のような現実があります。

  • 担当者が制度改正を常に追いかける時間がない
  • 外部研修に出向く余裕もない
  • 過去教材の整理・保管がバラバラ
  • 職員に合わせたレベル調整が難しい

結果として、「作り直すのが手間なので去年のまま」「外注したいけど予算がない」といった消極的な対応が繰り返されてしまいます。

■ 解決の鍵は「共通教材 × 継続的更新 × 柔軟な配信」

この問題を抜本的に解決するには、教材を仕組みとして整備することが必要です。その要点は、以下の3つに集約できます。

① 【共通教材の導入】

専門家が監修した法定研修用の標準教材を活用することで、個人任せにならない「安定した質の確保」が可能になります。たとえば、

  • 各法定研修テーマに沿ったパッケージ教材
  • 動画・スライド・ナレーション・確認テストを一体化
  • 複数施設間で同一水準の教育が可能

これにより、個別に資料を一から作る必要がなくなり、担当者の負担が大幅に軽減されます。

② 【継続的な情報更新体制】

教材は一度作って終わりではありません。制度改正や社会情勢の変化に応じて、アップデートし続ける必要があります。

eラーニング教材では、

  • 法改正や厚労省通知に応じた内容反映
  • 新しい事例やQ&Aの随時追加
  • 古くなった映像やナレーションの差し替え

などが、プラットフォーム側で自動的に行われる仕組みを備えることが可能です。

③ 【受講環境に合わせた柔軟な配信】

教材の内容だけでなく、「いつ」「どこで」「誰が」受けるかにも柔軟性が必要です。

  • 日勤・夜勤など勤務形態に合わせた自由受講
  • 外国人職員向けの字幕・スロー再生対応
  • 子育て中や短時間勤務の職員も受講可能

このように、職員に合わせる設計が、学習意欲と受講率の向上につながります。

■ 教材の“資産化”が、研修の質を支える

教材が毎年ゼロから作られていては、研修体制は育ちません。
一方で、eラーニングを活用して共通教材を整備し、それをベースに施設のニーズに合わせた微調整を加えていくことで、教材自体が「資産」となります。

  • 担当者が変わっても運用が続く
  • アップデートされた教材が自動で届く
  • いつでも、何度でも再利用できる

こうした持続的な教材運用体制こそが、職員教育の質を中長期的に支えていくのです。

■ 教材づくりから解放される施設運営へ

「研修やらなきゃ」「資料を作らなきゃ」
そんなプレッシャーから現場を解放するために必要なのは、人に頼らず、仕組みに頼ることです。

教材の作成・更新・配信をすべてeラーニング上で完結できる環境を整えることで、研修担当者は“教えること”に集中でき、管理者は“履修状況の把握”に注力できるようになります。

次回(第5回)は、「集合研修の限界とeラーニングの可能性」をテーマに、そもそも研修の形態として“集めて教える”スタイルがなぜ限界を迎えているのか、そしてそれを超える手段としてeラーニングがどのように機能するかを解説します。

OJTをより効果的に活かすためには、準備された知識の土台が欠かせません。


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