職員が「相談できる」職場風土とは──“声を上げられる”組織を育てる

こんにちは。前回は、教育担当者が直面する“時間・資料・管理”の三重苦と、それを軽減するeラーニングの仕組みについてお話ししました。
今回は、「職員が相談できる職場風土」について一緒に考えていきましょう。

ハラスメントより相談できない空気のほうが深刻

「困ったことがあれば、いつでも相談してください」
よく聞く言葉ですが、それだけで本当に職員が相談できるかというと、そう簡単ではありません。

  • 「忙しそうだから、話しかけづらい」
  • 「また自分のせいにされそうで怖い」
  • 「これぐらいで相談してもいいのか迷う」
  • 「前に話したけど、何も変わらなかった」

実は、ハラスメントの存在そのものよりも、相談できない職場の空気のほうが深刻な場合があります。

「黙っている=問題がない」ではない

管理者や運営側がよく口にする言葉に、こんなものがあります。

  • 「最近は特に苦情の報告もありません」
  • 「トラブルも聞いていませんから、現場は落ち着いているようです」

これは本当に“問題がない”のでしょうか?
それとも、“問題があっても声が上がっていないだけ”なのでしょうか?

カスハラをはじめとする理不尽な言動の多くは、
声にならないまま、現場で処理されてしまっていることが多いのです。

相談しにくいの正体

では、職員が相談をためらうのは、なぜでしょうか?
主な理由をいくつか挙げてみます。

1.感情を整理できていない
 → 怒り、悲しみ、不安が入り混じっていて、言葉にできない。

2.自分にも非があると思っている
 → 「もっと上手く対応できたら防げたのでは」と自分を責めてしまう。

3.相手がお客様であることの遠慮
 → 利用者や家族に不満を感じること自体に、罪悪感がある。

4.相談しても何も変わらないと思っている
 → 過去に相談しても反応がなかった、改善されなかったという体験。

こうした“心理的なハードル”を乗り越えるには、仕組みと風土の両面からのアプローチが必要です。

仕組みで守られているという安心感

まずは仕組み。
職員が「ここに報告すれば、きちんと扱われる」と思えることが重要です。

  • 報告先が明確に設定されている
 → 管理者、第三者委員、相談窓口など、具体的な担当者を明示する。
  • 報告内容が記録・共有されるルールがある
 → 相談内容が放置されず、追跡調査が行われる体制がある。
  • 報告した人が不利益を受けないよう配慮される
 → 匿名性の担保や、報告者の立場を守るガイドラインを整備する。

制度が整っていても、職員が「どうせ形だけでしょ」と思ってしまえば意味がありません。
“制度が動いている”という実感が、安心につながるのです。

風土が職員の背中を押す

制度だけでなく、日々の職場の空気も極めて重要です。
以下のような職場では、自然と相談の文化が育まれます。

  • 上司が率先して報告・共有している
 → 些細なトラブルも「みんなで考える」雰囲気をつくる。
  • 感情の吐露が許されている
 → 「それはつらかったね」と気持ちに寄り添う土壌がある。
  • 相談したら対応してくれたという経験がある
 → 過去の成功体験が、次の相談のハードルを下げる。
  • 報告したことが責められなかった
 → 「なぜ言わなかった?」ではなく、「言ってくれてありがとう」と受け止められる。

こうした“風土”を育てるには、日々の積み重ねとリーダーの姿勢が鍵になります。

教育で相談の文化を育てる

「相談していいんだ」「声を上げても大丈夫なんだ」
そんな感覚を、全職員に共有してもらうには、教育の場で明確に伝えることが不可欠です。

  • カスハラ対応研修に、相談ルートを明示して含める
  • ケーススタディで「どの段階で誰に相談すべきか」を問う
  • eラーニングで、いつでも相談窓口の確認ができるようにする

eラーニングは、「何度でも見返せる教育」を可能にします。相談できる風土の定着には、こうした反復可能な学びの仕組みが効果的なのです。

相談をゴールにしない

最後に大事なポイントを一つ。
「相談されたこと」自体をゴールにしてしまわないことです。

  • 相談があった → 放置
  • 相談があった → 担当者に回した → 終了

ではなく、その後どうなったかをフィードバックすること。
「あなたの相談を、ちゃんと受け止めて動いていますよ」というプロセスの可視化こそが、
本当の意味での“安心感”につながります。

🔸次回予告

次回(第7回)は、
「ケースで学ぶ、対応力のある組織のつくり方」をテーマにお届けします。

制度や研修だけでは育たない「判断する力」「実行する力」。

それをどう現場で鍛えるか──ケーススタディや応用教材の活用方法を解説します。

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