形骸化する研修──「やったことにする」カスハラ教育の実態
こんにちは。ここまでの連載では、カスハラ対応の属人化と、管理者の判断・行動が抱える構造的課題を扱ってきました。 第4回では、いよいよ「研修」そのものの在り方に焦点を当てていきます。
「一応やってる」が一番危ない
「うちの施設でも、年に一回はカスハラ研修をやっています」 「全体会議の時間を使って、30分ほど話をしています」 「外部講師を呼んで講演を聞かせました」
もちろん、これらの取り組み自体は否定されるべきものではありません。 しかし、問題はそれが“形だけ”になってしまっていることにあります。
- 内容が毎年同じで、実践につながっていない
- 一部の職員が出席できず、研修を受けていない
- 資料を配っただけで、内容を理解しているか不明
- 記録が残っていないので、やった証明にならない
つまり、「やったことにして終わっている研修」が意外と多いのです。
研修は「イベント」ではない
介護施設における研修が陥りやすい罠のひとつが、「イベント化」です。
- 講師を呼んだ=教育が終わった
- レジュメを配布した=伝わったはず
- アンケートで満足度が高かった=意味があった
……果たして、本当にそうでしょうか?
大切なのは、職員一人ひとりの「理解」と「行動の変化」です。
- どこからがカスハラか、自分の言葉で説明できるか?
- 実際に起きたとき、冷静に対応できるか?
- 被害にあった同僚に、声をかけられるか?
“知っている”だけでは不十分です。 “対応できる”ことがゴールであることを忘れてはいけません。
なぜ、研修が浸透しないのか?
では、なぜ研修は形骸化してしまうのでしょうか。 主な要因として、次の4つが挙げられます。
1.時間が取れない → 多忙な業務の中で、研修は「後回し」にされがちです。
2.全員が同じタイミングで受けられない → シフト制や急な欠勤によって、受講にばらつきが生まれます。
3.担当者が教材作成に追われている → 教材の更新が間に合わず、内容が古いまま繰り返されます。
4.受講管理が曖昧 → 誰がいつどんな内容を受けたか把握できず、継続的な改善ができません。
これらの問題が絡み合うことで、 研修は「目的」ではなく「義務的処理」として形骸化してしまうのです。
研修が「信頼の土台」になるために
逆に言えば、機能する研修は、職員からの信頼を集めます。
- 現場で困ったときに「あの研修で言っていたことだ」と思い出せる
- 研修内容が現実に即していて「役に立つ」と実感できる
- 定期的に学べることで「自分も成長している」と感じられる
つまり、教育は現場と職員をつなぐ“安心の仕組み”でもあるのです。
eラーニングで実現する「継続・記録・共有」
では、どうすれば研修を“やっただけ”にせず、実効性あるものにできるのでしょうか?
そのひとつの答えが、「eラーニングの導入」です。
eラーニングの特徴は、以下のような点にあります:
- いつでも、どこでも、何度でも → 時間や場所を選ばず、職員の都合に合わせて学べます。
- 受講履歴が残る → 誰が、いつ、どの教材を見たかを可視化できます。
- 教材の内容を常に最新に保てる → 時事的なトピックや制度変更にも即応できます。
- 確認テストやチェックリストで理解度を見える化 → 「わかっているつもり」を防ぎ、定着を促します。
このように、eラーニングは「形骸化しない研修」のための強力なツールになり得るのです。
研修を「仕組み」に──制度設計の視点へ
大切なのは、研修を“単発イベント”から“年間の学びの流れ”に組み替えることです。
- 毎年決まった時期に更新・配信する
- 法改正や社会的変化に応じて内容をチューニングする
- ケースベースの応用教材で判断力を養う
- 新任職員と中堅職員でレベル別の学習設計をする
- 全体での振り返りと再学習のサイクルを取り入れる
こうした設計は、eラーニングなら可能です。 むしろeラーニングでなければ、物理的にも精神的にも継続できない、という現場がほとんどではないでしょうか。
🔸次回予告
次回(第5回)は、 「時間がない、資料がない──研修担当の悩み」をテーマにお届けします。
現場で教育を担う担当者の多くは、「教材作成」「日程調整」「受講管理」の三重苦に直面しています。 それでも“やらなければならない”というプレッシャーの中で、どう支援の仕組みを整えられるかを一緒に考えていきましょう。
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「うちも研修はやっているけれど、浸透していない気がする」 「受講履歴が残らないので、毎回不安になる」 そんなお悩みをお持ちの方は、Smart Learn SDのeラーニング導入をご検討ください。

